暁 〜小説投稿サイト〜
ペルソナ3 追憶の少年
後編
[4/7]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初
外にいる。
靴を履くと、思い切って外に出てみた。
影時間の月は平常時より大きくそして明るい。虫の音も聞こえず、あたりは不気味に静まり返っていた。
いやな予感がする。
気づけばいつの間にかびっしょりと汗をかいていた。天田は呼吸を整え、額の汗をぬぐった。
今は影時間。シャドウが現れてもおかしくはない。
こんなところでシャドウに暴れられたら、菜々子や母親も巻き込まれることになる。そう、彼の母が命を落とした時のように・・・。
それなのに、今は槍もなければ召喚器も持っていないのだ。
玄関横のこじんまりとした庭にある物干し台で、長さの調整できる物干し竿を見つけた。それを手ごろな長さに調節し、武器として持っていくことにした。
シャドウには通常の武器は効かない。そしてシャドウはペルソナ能力者にしか倒せない。ペルソナ能力者が手にすることで、武器に特別な力を与えられるのだと聞いている。
以前、特別課外活動部の仲間である岳羽ゆかりは、おもちゃの弓で敵に大きなダメージを与えたという。
(この物干し竿が強い武器だと信じることが大事だ。きっと僕は、これでもシャドウを倒せる。)
召喚器もそうだ。ペルソナを呼び出す触媒にすぎない。ペルソナを呼び出す力そのものは、ペルソナ能力者本人にある。
(いざとなればきっと、召喚器無しでもペルソナも呼び出せるはずだ。)
天田はさらに慎重に足を進め、門から外を窺った。
6メートルほどの幅の前面道路。その反対側の壁にもたれるように人が立っていた。
こちらを向いたままで、虚ろな表情を浮かべている。予感の通り・・・・それはこの家のおばさんだった。
影時間なのに象徴化していない。嫌な予感が強まった。
天田は警戒しながら、寝巻姿で立ち尽くす おばさんにゆっくりと近づいていく。半分ほど進んで「おばさん?」と呼びかけてみた。
反応が無い。
改めて「おばさん、家に帰ろう。」と声をかけてみる。
おばさんは口を開けたまま、ああああ・・・と小さく声を漏らしている。
そして、ふいに ひゅっ と音を立てて息を吸い込み沈黙した。
「おばさん?」
おばさんはガクリと地面に膝をつくと、両手で頭を抱えて「うああああ・・・」と声を張り上げた。
驚く天田の目の前で、その体がみるみる黒い粘液のようなものに覆われていく。
そして、仮面をつけた異形の怪物が、おばさんの体からずるりと抜け出すようにして現れた。
「シャドウ!」
天田が叫んで身構える。
2メートルほどの真っ黒な怪物は、天田に向けていきなりその腕を振り回してきた。
とっさに飛びのきつつ、物干し竿を前に突き出す。
タイミングよく敵にヒットし、シャドウがぐおっと声を上げて大きくのけぞった。
(いける。これでもダメージを与えられる。)
その反応に勇気を得て、持ち慣れない物干し竿を旋
[8]前話 [1] [9] 最後 最初


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ