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ペルソナ3 追憶の少年
後編
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う。
「大丈夫です。一人で帰れます。」
「だめよ、何かあったら大変・・・。」
そこまで言ったところで、母親がまたしてもいいことを思いついた、というような表情を浮かべた。それを見て天田は、今度は何事か、と思わず怯んだ。
「そうだ! 天田君、いっそのこと今日は泊っていかない?」
「ええっ? そんな・・・病気の人がいるときに悪いですよ。」
「菜々子の相手をしてもらえると助かるわ。私はおじさんの食事の準備もしなきゃいけないし・・・ね。そうしてくれない?」
母親にぐいぐい迫られて、天田は途方に暮れた。
(弱ったなあ・・・。)
菜々子の母親は思いのほか強引だった。そういえば、自分の母にもそんなところがあったな、と懐かしく思い出す。
寮の人達には、それなりに大人ぶったクールな応対をすることもできるのだが、この母によく似た人にはどうも強く出ることができない。それにまんざら悪い気分でもない。こうして強く出られると、なんだか甘えてしまいたいような、そんな気持ちになってしまう。
結局、学園の理事長であり、特別課外活動部の顧問でもある幾月に電話して、外泊することを伝えることになった。菜々子の母親も電話に出て丁寧に挨拶をした。
「天田君、事情はわかったよ。寮の方は、桐条君からみんなに伝えてもらうから。」
幾月はいつものように飄々とした調子で天田に言った。
「すみません。夜の探索の方も今日はお休みさせてください。」
「そんなこと心配しなくて大丈夫だから。今日はゆっくりしてらっしゃい。」
幾月との電話を終えてやれやれと思っていると、今度は「お風呂に入ってらっしゃい。菜々子も一緒に入れてもらえる?」と声をかけられた。
それを聞いて菜々子が嬉しそうに飛んでくる。
「おにいちゃんとおふろ?」
そして天田の返事も待たずに、服を脱ぎだした。
二人で湯船につかって一緒に歌を歌いながら、(なんでこうなっちゃったかな?)と天田は首を傾げた。

異様なうなり声が響き、目を覚ました。
暗闇の中で、一瞬、自分がどこにいるかわからなかったが、やがて菜々子の親戚の家に泊まったのだということを思い出した。
風呂から出た後、和室に敷いた布団に寝そべって菜々子に絵本を読んであげているうちに、一緒に寝落ちてしまったらしい。
夏だから風邪をひくこともないと思ったのか、タオルケットだけが体にかけられていた。
(それにしても、今の声はなんだろう・・・)
不吉な予感がして上体を起こす。
手探りで枕もとのスタンドを探り当て、スイッチを入れてみたが明かりはつかなかった。
記憶を頼りに畳の上を這って進み、廊下との境のふすまを開ける。
廊下の小窓から入ってくる月あかりで、うっすらと周りの様子が見えた。
月の光が妙に明るい。周りが不思議な緑色にかすんで見える。
そこで気が付い
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