第十章
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「そのお客さんの姿形、出来れば画像といきたいけれど」
「絵でもですか」
「見せてくれるかしら」
「わかりました、では」
店長はすぐにだった、絵の上手なメイドに頼んでその客の顔写真、全体像のそれも描いてもらい紗耶香にその絵を渡した。
その絵を受取ってからだ、紗耶香は秋葉原から原宿に戻った、原宿に戻るとすぐにだった。
沙耶香は原宿の裏通り、賑やかな表通りとは違い人がいないそこを通りそしてだった。
一人で歩きつつそのうえで影から自分の分身たちを一人また一人と出していった、そうしつつ出て来た分身達に話した。
「そのお客さんの姿はわかったわね」
「ええ、よくね」
「よくわかったわ」
「どんな姿をしているのか」
「絵が随分と上手だったから」
「余計にね」
分身達は紗耶香の周りを魂の様に浮かび漂いそのうえで本体と話している、そのうえで本体である彼女に応えているのだ。
「わかりやすかったわ」
「背は一六三程ね」
「眉は太く顔に彫があるわね」
「アジア系の顔で目と髪の毛は黒ね」
「やせ形でガニ股」
「服は白のブラウスと青のスラックス」
「靴は黒ね」
その外見や服装の話が為された。
「全て覚えたわ」
「隅から隅までね」
「後はこの原宿にいるなら」
「私達が手分けして探せば」
「見付からない筈がないわ」
「魔術師の目ならね」
「魔術師の目は千里眼よ」
紗耶香本人が妖しく笑って述べた。
「しかも壁の向こうもお池の底も見えるわ」
「まさに見えないものはないわ」
「それは私達分身も同じよ」
「それならね」
「どう隠れていても見付からない筈がないわ」
「何があろうとも」
「そう、だから今から探し出してみせるわ」
手掛かり、それも極めて重要な者であると思われるその客をとだ。紗耶香は微笑んで言ってであった。
分身達を原宿の各地に向かわせ自身も原宿を歩き回ってだった。
その客を探した、紗耶香は若者達がはしゃぎ遊んでいる原宿の中にいるにしてはいささか場違いな姿であるがその中を闊歩した。そうしてだった。
一時間程歩きその客を探しているとだった。
あるビルの路地裏から声がした、その声の主は。
あの客だった、普通なら誰も気付かない様なそこから紗耶香の本体に対して言ってきた。
「君、僕を探しているのかな」
「そうだと答えればどうなのかしら」
紗耶香はその客、やはりカクカクとした操られているかの様な動きと抑揚のない人間的でないものを見せる彼に対して言葉を返した。
「一体」
「人を探すのはいい趣味じゃないね」
「探すのが仕事の場合もあるわ」
紗耶香は客だった男にまた言葉を返した、今度は悪びれずだった。
「それが今の私よ」
「そう言ってもらうと困るな」
「貴方がというのね」
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