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リュカ伝の外伝
才能と素質 後編
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りません……」

アイリーン・アウラーは消え去りそうな声で答えた。
凄い能力だ……私なんか昨日の夕飯も憶えてないのに。
陛下の能力の真偽は兎も角、ここで『ある』とは答えられないだろう。

「うん。じゃぁ今弾いた曲……僕が君から盗んだって事は無いよね?」
「……ありません……」
「うん。じゃぁ聴くけど、今の曲と同じ曲を試験で披露したけど、君の作曲なのかな?」
「……ます……」

「え、何? 聞こえなかった」
「……違い……ます……」
遂に盗作を認めた。そして泣き出してしまった。

「あぁ泣かないで……泣かせに来たんじゃないんだ。ピエッサの名誉回復が目的の一つなんだから……」
「あ〜あ、女泣かせてやんの。さいてー」
はい。これはウルフ閣下の言葉です。

「あのね聞いて。僕は君を責めようとは思ってないんだ。誰にだって過ちの1つや2つ……あるいは40〜50個はあるさ」
「そんなにあるのはアンタだけだ」
はい。これもウルフ閣下の台詞です。

「聞いた話だと君はピアノや歌の技能は凄いらしいじゃないか。しかも聞いただけで完全にコピーできるんだから、才能は豊かで素晴らしいと思うよ。でも如何(どう)やら新たに作り出す能力が皆無みたいだね」

なるほど……
誰かが作り出した曲であれば、どんなに難しくても弾きこなせるのか。
でも自身じゃ作り出せない……この試験は厳しいだろうな。

「試験の内容的に誰かとの共作でも良いんでしょ? 友達に頭を下げて共作扱いにさせて貰えば良かったんじゃないの? ……頭を下げるのはプライドが許さなかった?」
「……は……はい……」
なまじ技量があるから、他者に頭を下げられなかったのか。

「そっか……で、先生に相談したらこうなったのか」
「……………」
アイリーン・アウラーは黙って頷いた。

「盗作を見逃す代償として身体での支払いにしたのは……君から? それとも先生が要求してきたの?」
「……………」
「へ、陛下! わ、私は「ちょっとサムは黙ってて! 後でゆっくりお話しするから」
サム・ラゴウスは慌てて言い訳をしようとしたが、厳しい口調の陛下に遮られる。

「……わ、私からです」
「あら……予想と違った」
私の予想とも違った。てっきりサム・ラゴウスからだと……

「追い込まれてたんだね……でも若いんだから遣り直しは効く。今日から……いや、今から少しでも努力していこうよ。あんなオッサンにこんな可愛いオッパイを託すのは勿体ないよ」
陛下は優しく言うと、服の上からでも解る巨乳にナチュラルにタッチする。余りにも自然な動作で誰もそれがセクハラに当たるとは思えない。

「うん。じゃぁこれからは努力するし、力及ばない時は誰かに頭を下げられるね?」
「は、はい陛下」

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