第十話〜代償〜
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体力を回復し帰国の途に着いた。
戦における一番の手柄をあげた故か、行軍中の雰囲気はなるほど和やかなものであった。ある一つの報せが来るまでは。
「孫堅様は何処(いずこ)に!」
それは突然のことであった。
行軍する軍勢の前方から馬にまたがった一人の兵卒が駆けてきたのだ。その鎧は返り血を浴び、背中には幾本かの矢が突き刺さっている。
「何事か!」
桃蓮は声を張り上げ、自らの存在の場所をその兵卒に示す。
兵卒は息も絶え絶えにそこまで駆け寄ると、すぐさま下馬し、桃蓮の前に跪く。
「報告いたします!安昌の港が劉表の軍勢により襲撃を受けました!その数およそ一万五千!」
「っ!?…先手を打たれたか」
桃蓮の不安は的中してしまった。
江の疑問は負の方向でその答えを得てしまった。
「古狸め…やってくれるっ!」
今は見えぬ怨敵相手に揶揄の言葉を口にするが、それも虚しく空へと消える。
すぐにそのしかめっ面を引き締めると、桃蓮は指示を出し始めた。
「周泰、孫策、凌操、黄蓋、朱治!至急一万の兵で安昌へと向かえ!…周瑜!ここから最短の道筋は分かるか」
「ここからだと一度白河沿いに出るのが妥当でしょう。直進すれば丘陵地が多く、進軍の妨げになりかねません」
「黄蓋!お前が大将として軍を率いよ!古狸の手勢に戦というものを教えてやれ!」
「承った!」
返事をすると祭はすぐに動いた。
そして一刻と経たず、軍を編成し南方へと駆けていった。
「我らも悠長に行軍するわけにはいかん!全軍駆けるぞ!」
先遣隊が出発して少し経ち、今度は桃蓮率いる本隊が全速で行軍を再開した。
本隊の将兵の表情には、ただ一人の例外を除いて焦りの感情が刻々と刻まれていた。
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白河沿いの荒地を赤い軍勢が疾走する。
歩兵にとっても騎兵にとってもその行軍は常軌を逸したものだったが、弱音を吐くような兵はこの孫呉の中にはいなかった。
彼らは先頭をひた走る彼らが主君の背中をただ必死に追いかけていた。
軍勢が河岸段丘を右手にした時、不意に何かが桃蓮の頬を掠めた。
「うぐっ!」
苦悶の声をあげ、背後で何かが地に落ちる音を聞く。
慌てて進軍を停止し、背後を見れば、そこには物言わなくなった己が将の姿があった。停止していた思考が再開される。
「チッ、伏兵か…!総員、崖の上に伏兵だ!全速力で駆け抜けろ!」
足を止めていた軍を再度走らせる。
そんな中で桃蓮は自らの甘さ
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