第1部
カザーブ〜ノアニール
故郷にて
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いでしょ!!」
「あーごめん、あそこのおかみさん、酔っ払いとか嫌いみたいだから……」
「あたしをその辺の酔っ払いと一緒にしないでよぅ!!」
「いや私に怒っても……。まあいいや。それでお酒飲みに酒場に向かってるの?」
「ああ。オレは別に酒飲まねーし、宿屋でくつろいでもいいかと思ったんだけど、こいつがうるさくてさ。ミオもいないし、こいつ一人で行かせるのもいろんな意味で危険かと思ってついてきたってわけ」
ナギがシーラを見下ろしながら言った。意外にナギって面倒見がいいんだよね。
二人だけかと思ったら、少し離れたところにユウリがいた。
「ユウリも?」
いつも単独行動をとるユウリが二人と一緒だなんて珍しい光景だ。
「まさかこんなに何もない村だとはな。娯楽の一つでもないのか?」
ユウリが皮肉たっぷりに言う。いやだから、私に言われても困る。
「ねえ、だったら夕飯うちで食べてかない? たいした物はないけど、ご飯代ぐらいは浮くでしょ?」
「ミオちんの家!? 行く行くー!!!!」
シーラが目を輝かせながらぴょんぴょん飛び跳ねている。かなり乗り気なようで、こちらとしてもなんだか嬉しい。
ナギも「食えるんだったら何でもいい」の一言で了承してくれたようだ。
ユウリはどうなんだろうか?
エマのことを考えると、ユウリにはぜひとも来てほしいのだけれど、彼がこういった食事会に快く参加するかといわれれば、正直自信がない。
現に今も興味なさげな顔で私のほうをじっと眺めている。何を考えているのかその表情からは全く読み取れないところが余計怖い。私はおっかなびっくり尋ねてみた。
「あの……無理にとは言わないんで……」
「……」
予想通りの沈黙。
こんな調子で結局最後は私の方から頭を下げてしまう。一ヶ月経ってもこんな関係なんだから、好きな食べ物なんてわかるわけがない。
しばしの沈黙の後、ユウリは顔色一つ変えずやっと声を発してくれた。
「家に案内しろ」
「はっ!?」
それは予想外の答えだった。予想外すぎて一瞬何のことだかわからないほどだった。
「えっと……それって、来てくれるってこと?」
ユウリは無言で頷いた。それならそうとはじめから言えばいいのに。
あいかわらず何を考えているかわからなかったが、ともかく皆を我が家のパーティーに招待することに成功した私は、宿屋には寄らずそのまま自分の家に向かうことにした。
我が家に着いた途端、家の中は歓迎ムード一色だった。
「まあまあ! あなたが勇者のユウリさんね!! ミオからあなたたちのことは伺ってるわ。さ、狭いけど入って入って」
お母さんがユウリたちを部屋へ促した。後ろにいたエマがユウリをじっと見つめていたが、当の本人は気づいているのかいないのか、相変わらずの無反応。
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