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ソードアート・オンライン クリスマス・ウェイ
湖の夜(2)
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よ! あの口のなか、ぬめぬめするんだもん……二度とゴメンよ! それともなに? キリトくんはわたしが『食べられ』ちゃうところを見てみたかったりするのかしら?」

 耐寒バフを即時貫通する、極寒の声音でアスナが言った。ぶんぶん首をふる。

「け、けどこれはもう……戦うしかないか。一度っきりちのクエストっぽいもんな、これ。もったいないし」
「……今日はこれからゆっくりしようと思ったのに」

 俺は傍らにおいていた片手剣を鞘から引っこ抜く。ほとんど同じタイミングでアスナも装備フィギュアをいじりまわし、愛剣を装備した。いつもは誰かしら仲間と一緒にクエストやモブ狩りを行うから、こうして二人きりでクエストに挑むのは、実にひさしぶりだ。

「まあ、こんなクリスマスも、らしくていいんじゃないか? 古今東西、MMORPGプレイヤーにクリスマスなんてないんだぜ? クリスマス限定のボスを倒して、ドロップ品をかっさらうことこそ醍醐味ってもので……」
「……そうだね。もったいないし……」
「やりますか」

 しゃりん、と冷気を切り裂くような鞘鳴りをさせて、アスナが細剣を引き抜いた。
 心底頼もしく思いつつ、俺は最後にもう一度だけ、湖をみた。
 二足歩行の魚型イベントボスが乗っている氷が、月に照らされて青白く輝いている。
 旧アインクラッド、最後の思い出を思い返しながらアスナと仲間達と一緒にいられる奇跡を噛みしめながら、背中を守ってくれる存在に心から感謝した。
 新婚生活最後の思い出をくれたイベントボスを再び倒して、また新しい時間をはじめよう。
 
「――くるよ!」
「おうっ!」

 アスナの涼やかな声に応え、俺はつっこんでくる湖の主に向かってソードスキルを叩きつけた。

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