第3話
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し掛けられる。その口調は先程話していたよりもずっと弱々しい。
「私ね、家族が居たんだ」
それは、1人の少女の普通の家族の話。何でそんなことを、とはとても言える雰囲気でもなく。 そこから琴音は彼女の家族と過ごした時間を、楽しそうに語っていく。
自分の家族は4人家族で、父親と母親、彼女と弟がいた事。
彼女の父は威厳を持ちながらも優しい父であったということ。
彼女の母は優しく、彼女や弟を大事に育ててくれた愛のある人だということ。
彼女の弟はちょっと生意気だったけど、彼女の弟らしくお人好しであったこと。
そこまで語った琴音だったが、何かに怯えてるかのように、声が震える。
「でも・・・・・・2年前。私達の家族は怪物に殺された。私は必死に息を殺してる中で怪物は悲鳴を楽しむように、笑いながら私の家族をみんな殺したの。・・・それで、それで・・・・・・」
「・・・・・・そっか」
「ご、ごめんね! グスッ・・・・・・もう寝よっか!」
琴音はやがて堪えきれなくなったのだろうか。啜り泣く音が部屋中に響き渡る。
弱ってる彼女に言葉を掛けようとして、俺は唾を飲み込む。一体、自分が彼女に何が出来るのだろう。俺もまた、彼女の家族を手に掛けた怪物でもあるのに。今更誰かに寄り添うなど、白々しいにも程がある。
俺が罪悪感と葛藤に魘されている間に、彼女はこれ以上弱い所は見せまいと見栄を張って再び眠りについた。
泣き疲れたのか、寝息をたてている彼女に続くように、俺も瞼を閉じた。
彼女の、人々の平穏を間接的に壊した、罪悪感から目を背けて。
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