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(意外な一面を妄想するためのお題 より)

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 腕の中に抱えていた温度がそっと離れていく。もう朝か。習慣化したそれで目は覚めているが、瞼を開かず幽かな衣擦れの音を楽しむことも常だ。やがて再び微睡み始める頃、小さな安堵の溜息と寝室のドアの開閉音が聞こえ、気配が遠のいていった。

「よ、っと」

 完全に部屋から離れたであろうタイミングで身体を反転させ、一眠りは出来ないがドアに背を向ける。

「プーロートー、入るよー」

 控えめな呼び声とドアノブを捻る音を連れ、彼女の気配が近付いて来た。掛け布団越しに軽く揺すりながら起床を促される。――まだだ。

「朝だよー。起きてー」

 名前を呼ばれるが、あと三回、ニ回。

「クー、朝だよ。そろそろ起きて」

 一回。のろのろと目を開くフリから身を捩り、こちらを覗き込む呆れ交じりの顔に手を伸ばす。柔い頬に触れた手へ小さな手が添えられ、ふんわりとした笑みが開いた。

「おはよう、クー」
「おはよう」

 とっくに目覚めているのにベッドから抜け出さない理由。彼女の声で笑顔で一日を始めたい、ただそれだけで――こんなに嬉しいことはない。そうだろ?




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