第一部
第四章 いつだって、道はある。
ヒルゼン
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こととか。
――例えば、一緒にラーメンを食べたこと、おいろけの術を使って卒倒させたこと、色んな悪戯して怒られたこととか、その他、色んな、ことが。
それら全てが、白い花と共に三代目の前に置かれていく気がした。
置いてしまったら三代目のことを忘れてしまうのではないかと不意に怖くなる。それでもナルトはぐっと唇を噛み締めて踵を返した。次の参列者が花を置いた。
「なあ、マナ」
マナが自分の隣に並んだ。マナはナルトと同じで、小さい頃から三代目と暮らしてきていた。二人ともアカデミーの第四学年頃から一人暮らしをはじめたけれど、幼い頃から三代目といたのは同じだ。
「俺さ、あの白い花ん中にさ……入ってる気がするんだよ、俺たちと三代目の、その、思い出みてえなもんが。でもあそこに置いちゃったら……なんか……」
ナルトは黙り込んだ。沈黙が続く。花が一輪、また一輪と積み上げられていく。暫くの間黙っていたマナが、ふと口を開く。
「三代目ってさぁ、ジジイだろ」
「……え?」
「ボケ始まってるよ、きっと。物忘れひどくなってるはずだ、うん。……まあだからこそアタシらがさ、思い出のたくさん入った花あげてさぁ。そうじゃないと忘れちまうかもしんないだろ? だから思い出のいっぱい詰まった花、置いとくんだよ。ジジイ忘れんなよ、忘れたら承知しねえぞ、ってな」
マナと視線が合う。涙を滲ませた瞳で、マナが必死に笑って見せた。いつの間にか雨は止んでいた。
「でも、ほんとわっかんねえの」
マナが俯いた。ぽつり、と呟く。
「人ってなんで人のために命かけれんのかなあ」
「人間が一人死ぬ……亡くなる。過去やその生活と一緒に」
答えたのはイルカだった。マナとナルトの視線がイルカに向いた。
「沢山の忍びが任務や戦争で死んでいく。驚くほどあっさりと――簡単に。彼らだってその一人だよ。死にゆく者にも夢や目指す者はある。しかし、誰にでもそれと同じくらい大切な者があるんだ」
両親――兄弟。友達や、恋人。自分にとって大切な人たち、そして彼らと持ってきた信頼と絆。時が経つにつれ太く強くなっていくその繋がりの糸。
「理屈じゃないんだ。……その糸を持っちまった奴は、そうしちまうんだ」
ナルトも同じだった。サクラとサスケを守ろうと必死に戦った。死ぬという概念はぼんやりとしか存在しなかった。その意味は、イルカの言葉はなんとなく理解できる。でも死ぬのは、辛いなと想った。
でもわかってる。三代目は犬死したわけじゃない。大切な何かを守り、そして大切な何かを託して死んでいったのだと、なんとなくだが、わかる。
「雨、止んだね」
サクラの言葉につられたかのように、皆が空を見上げる。黒雲は遠ざかり、青空のかけらがまた、視界
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