第二章
[8]前話
「ここは世の中の女の人達にわかってもらいましょう」
「ユースフのことを」
「彼がどれだけ美男子か」
「それでこれだけ美男子なら」
「世間に知ってもらったわ」
「奥様のことを誰も悪く言わない筈です」
「そうね、私もね」
奥方にしてもだ、これまで過ちを犯そうと思ったこともない。だがユースフを見ればだったから言うのだ。
「これまでなかったし」
「はい、それでは」
「皆にもわかってもらうべきね」
「それでいきましょう」
女奴隷は自分の主である奥方に強い声で言った、そうして宴の場を設けてあえて自分のことを悪く噂する世の女達を家に呼んだ、夫はどうしてそうするのかすぐに察してだった。妻に笑って言ったのだった。
「いいな、開くといい」
「それでは」
「ああ、これで皆お前のことを悪く言わなくなる」
こう言って快諾してだった、宴は家の主の承諾も得て開かれるkとになった。世の女達は奥方のことをあれこれ言いつつも宴となると現金と言えば聞こえが悪いがそれでもだった。
宴に出た、そうして今は噂なぞせずににこにことしていた。そこで食べるものに美味い飲みものも出そうとすると。
奥方はユースフを給仕として呼んだ、そうして彼が宴が行われている部屋つまり奥方が女達と共にいる部屋に入るとだった。
誰もが彼の容姿を見てだった、思わず感嘆の言葉を漏らしてアッラーの名も出してそうして口々に言った。
「何とまあ」
「こんな美形がいるなんて」
「これまた見たこともない美男子ね」
「うちの娘の婿に欲しいわ」
「養子に欲しい位よ」
「彼がよ」
奥方はユースフの美形ぶりに驚くばかりの女達に笑って言った。
「その相手よ」
「いや、これだけ美形なら」
「ついふらっとなるのも当然ね」
「私だってこんな人がいたら」
「私もよ」
「もうついつい」
「そうなってしまうわ」
皆で言う、そしてだった。
世の女達は奥方をあれこれ言うことはなかった、ユースフのあまりもの美男子ぶりに誰もが自分もこれならと思ったからだ。今度はユースフのあまりもの美男子ぶりが彼女達の話題となったのだった。
預言者ユースフがどれだけの美男子だったか、コーランには書いてある。あまりもの美男子なのでついつい身持ちの固い女も過ちをとなってしまいかねない。世の中にはそこまでの美男子もまたいる、コーランに書かれている実に面白い話の一つである。美男子も過ちもあるがそういったもの全てをおおらかかつ明るく受け入れる。それもまたコーランでありイスラムであるということか。
美男子過ぎて 完
2019・6・2
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