第一章
[2]次話
美少女顔
富田太一の背は日本人としてはかなりのものだ、一八七ある。だがその顔はというと。
奇麗な二重の切れ長で和風の美しさがある、細く黒い眉の奇麗なカーブを描いている。色白で面長で鮮やかな紅の小さな唇で鼻は高い。その顔立ちを見てだ。
クラスメイト達は太一にいつもこう言っていた。
「富田って背は高いけれどな」
「それもすらりとしていて」
「けれど顔はな」
「女の子そのままよね」
「もう美少女」
「そんな顔よね」
「いや、僕男だから」
そこはとだ、太一は断った。髪は黒髪をショートにしていて八条学園高等部の制服の一つである青の七つボタンの詰襟の服も似合っている。
「顔はあれじゃない」
「性別と関係ないか」
「そうだっていうのね」
「うん、顔は顔だよ」
あくまでこう言うのだった。
「本当にね」
「それでもお前の顔ってな」
「美少女顔なのよね」
「顔だけ見たらな」
「制服とか髪型除いたら」
「この顔は昔からだから」
見れば睫毛も長い、そこも美少女的であった。
「子供の頃から言われてるよ」
「そうだよな、やっぱり」
「その顔だとね」
「整ってはいるけれどな」
「本当に美少女顔だし」
「最近体臭も女の子みたいだって言われるよ」
こちらもというのだ。
「居合をしてても動きがそうだって言われるし」
「部活でもか」
「そういえば富田君って居合部だしね」
「そっちでもか」
「言われてるの」
「骨格からして違う筈だよ」
男の自分と女の子はというのだ。
「それでこう言われるのってね」
「自分としてはか」
「嫌なの」
「女の子みたいだって言われることは」
「お顔のことで」
「そうだよ、僕としては」
太一は自分の本音も話した。
「背が高いことは嬉しいから」
「あれか、男らしく見られたい」
クラスの男子の一人が言ってきた。
「そうか」
「うん、もっとマッチョになって」
「シュワちゃんみたいにか」
「隠し子とかはいなくてもね」
何気にスキャンダルの話も入れた、こうしたスキャンダルは世界の何処にもよくある話であろうか。いいか悪いかは別にして。
「それでもだよ」
「男らしく見られたいか」
「女の子じゃなくて」
「身体の匂いも居合の動きも」
「どんなことでも」
「そう思うよ、そりゃ顔はいいに越したことはないと思うよ」
太一にしてもというのだ。
「それでもね」
「女の子みたいな顔はか」
「今みたいなお顔はなのね」
「個人的には好きじゃない」
「そういうことね」
「言っても考えても仕方ないけれど」
それでもというのだ。
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