第三章
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兵の中で最も立派な外見の者を指差して周りに話した。
「この者だ」
「この者?」
「この者といいますと」
「この者をモデルにしてだ」
そのうえでというのだ。
「大王の像を造るのだ」
「あの、陛下」
廷臣の一人が部屋に掲げられているカメハメハ一世、大王の肖像画を見つつ王におどうかという顔で述べた。その肖像画には褐色の肌で恰幅がよく唇の厚い威風堂々とした感じの初老の男が描かれている。
その大王の肖像画と兵士の顔を見つつ王に言うのだった。
「どう見ましても」
「大王とその兵の顔はだな」
「全く似ていませんが」
「それでもいいのだ」
王はその廷臣に笑って答えた。
「別にな」
「別にですか」
「そうだ、いいのだ」
特にと言うのだった。
「それでもな」
「実際の大王のお顔と違っても」
「像の姿が恰好いいとな」
それでというのだ。
「構わない」
「それはどうしてでしょうか」
「像が格好いいのならな」
王は廷臣に玉座から微笑んで話した。
「大王も恰好いいと思われる」
「だからですか」
「そして後世大王の姿を見た者は残っているか」
「それは」
「今もいないな」
「はい、もうです」
それこそとだ、廷臣は王に答えた。
「この世には」
「そうだな、では大王の姿を誰も見ていないのなら」
「お姿はですか」
「知らないならな」
まさにというのだ。
「恰好いいものだったと思わせるのがいいであろう」
「だからこそですか」
「この者をモデルに選んだのだ」
王は兵士を見つつ廷臣に微笑んで話した。
「その様にした」
「そういうことですか」
「ではよいな」
「はい、この者をモデルにして」
「恰好のいい大王の像を造るのだ」
こうしてだった、王はカメハメハ一世即ち大王の像を造らせた。そうして完成した像を見つつ笑顔で話した。
「実に恰好いいな」
「はい、ハワイの大王に相応しいです」
「我等の英雄に」
「これ以上はないまでに」
ハワイの者達もその銅像を見て口々に言った。
「これが後世に伝わるのですね」
「大王の像と」
「左様ですね」
「そうだ、永遠に残るのだ」
まさにとだ、王もその像を満足している顔で見つつハワイの者達に応えた、そして実際にその像を見て誰もがそれがカメハメハ大王だと思った。
ハワイ州最高裁判所にこの銅像はある、実に見事な像でありがその銅像の話を聞いて誰もが驚くが像の素晴らしさは見ての通りだ。尚地中海に沈んだ像は言引き揚げられ大王の生誕地であるハワイ島北部のカバアウにありもう一つあってそちらはハワイ島東部のヒロにある。どの像も大王を讃えている。実際の大王の外見とは違っていてもこのことは確かである。
銅像の姿 完
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