エピローグ
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砕かれてバラバラになった宝石は、それでも厳重に、宝箱のような大きな箱の中に布に包んで収められていた。何年経っても、輝きは失われていないようである。
「でも……なんですぐに教えてくれなかったの?」
これについては、私は不服だった。話を聞いた限りでは、すぐに教えてくれたって支障はなかったはずだ。
「もしお前がこの話を知っていたら、必ずそのネックレスを守ろうとするだろう? 知らなかったから、危機感がなかった」
確かにそうだ。私は直前までいたずらだと思い込んでいた。
でも、怪盗キッドからしたら、私がそんなだったからこそ盗みやすかったんじゃないだろうか。それなら言っておいた方がよかったはずだ。
お父さんが言おうとしていることがわからなくて首を傾げると、お父さんはその様子を見て苦笑した。
「お前が心配だったんだよ」
私が言葉を返す前に、お父さんは隠れるように部屋の外に出てしまった。
だけど、お父さんの耳が少し赤かったのを、私は見逃さなかった。お父さんのことも、私はあまりわかっていなかったのかもしれない。
こうして、怪盗キッドが披露したマジックショーの数々と共に、私の心のモヤモヤは解消されていったのだった。
今回のことは、意図的に私を助けてくれたのか、それとも本当にただの偶然か、もしくはただの成り行きだったのかもしれない。
いずれにせよ、私にはもうわからないし、謎を解き明かす術も、きっともうない。
ただ私の中で、ここ何日間かの出来事は、夢のひとときのようだった。
彼は紛れもなく怪盗で??人を楽しませる、最高のマジシャンだ。
それから、私とアオイの日常は、以前と変わらない平凡な毎日に戻った。
恋人になったという肩書きとは関係なく、今までとなにも変わらない関係が続いている……と言いたいところだけど、大きく変わったことが一つだけある。
「ツグミ、おはよ! 昨日の新聞見たか?」
「見た! 時計台、絶対見に行こうね!」
私とアオイは、テレビと新聞は欠かさず見るようになった。
そして、どこかに予告状が来たら、できる限りその場に行くようにしている。キッドコールをする群衆に紛れつつ、怪盗キッドのマジックショーを心待ちにして、いつも二人でその姿を見守っていた。れっきとした大ファンだ。
私とアオイの部屋には、今でもあの日もらった予告状が、大切に飾られている。
Fin.
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