暁 〜小説投稿サイト〜
Episode.「あなたの心を盗みに参ります」
本編
本編9
[3/3]

[8]前話 [9] 最初 [2]次話
。まだ少し顔が赤い。

「俺……ツグミの気持ち、勝手に決めつけてた。本当にごめん」
「え、えっと……」
「俺の気持ちは、ツグミには迷惑なものだと決めつけてたんだ。ごめん」
「……ううん。私もごめんね」

 私に頭を下げるアオイに、私は顔を上げるよう促した。アオイだけのせいじゃない。はっきり言わなかった私も悪い。

「俺も、ツグミが好きだ。ずっと……一緒にいてほしい」

 そう言ったアオイは、真っ直ぐに私の目を見つめていた。私の気持ちはもうわかっているはずなのに、ものすごく緊張しているようだった。
 私はニコリと微笑むと、持っていたネックレスをアオイの前に差し出す。

「これ、今日返してもらったの。つけてくれないかな」

 差し出されたものを見ると、アオイは一瞬驚いたような顔をしたが、すぐにそれを受け取った。
 私はアオイに背中を向けて、付けるように促す。アオイは私の首にネックレスをあてがうと、素早くつけてくれた。

 つけ終わったことを確認して、アオイの方を振り返る。目が合うと、アオイは私を見て照れたようにはにかんだ。

「おそろいだな」

 その言葉を聞いて、私も釣られて微笑んだ。アオイの首元にも全く同じネックレスが光っている。
 ずっとつけていてくれてたんだと、今更ながらに気づいた。

 この二つのネックレスは、私にとって、二人を繋ぐ赤い糸のように思えた。


「あ、ツグミ。そういえばさ」
「なに?」

 バルコニーを出ようとしたとき、アオイがふと思い出したように口を開いた。なにか考え込むような表情のアオイに、私は不思議に思いつつ首を傾げる。

「怪盗キッドって……めちゃくちゃかっこいいよな?」
「そうだよね!?」

 怪盗キッドは、私の心は盗めなかったと言ったけど、そうではない。私の心と、そしてアオイの心までをも、しっかりと盗んでしまったのだった。

[8]前話 [9] 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ