本編
本編9
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と、それはお馴染みの、怪盗キッドの予告状だった。表面には短くこう書かれている。
『今宵 あなたの大切なものを 盗みに参ります 怪盗キッド』
「これって……」
「うん。どういうわけかわからないけど、怪盗キッドは俺に嘘の予告状を送ったらしい」
その予告状は、私の持っているものと比べると、最後に添えられた怪盗の絵が、なんだか少し変だった。髪の毛が多い。
「本当だ〜。でも、なんでそんなことしたんだろうね?」
「わからないけど……確実なのは、俺の嘘を見抜いてたってことだな」
「え、どういうこと?」
よくわからなくて首を傾げると、アオイは少し迷うように視線を下に落とした。でもすぐに顔を上げて、真剣な目を私に向ける。
「俺、この予告状を見て……すぐにツグミのことだって思ったんだ」
「……!」
「さっきも……焦って気持ち悪いこと言った、ごめん。でも、全部本心なんだ」
アオイはそう言って、私に向かって微笑んだ。その顔は、なんだかすごく切なそうだ。
「っわ、私も! 私もアオイが大事だよ! 気持ち悪くなんか、なかったよ」
「……うん、ありがとう」
私が気を遣って言っていると思ったのだろうか。アオイはなんだか悲しそうな、辛そうな顔で笑った。
私はわかっていなかったようだ。アオイは、想像以上に鈍感なのかもしれない。というより、馬鹿みたいに自分に自信がないのだ。
とにかくもっと直接的じゃないとダメだ。私がここで言わなきゃ、もう一生伝わらない。
そう思った私は、諦めたように俯いてしまったアオイの肩をガッと掴んだ。
「アオイ!」
「おわっ、なに……」
「私、アオイのことが好き! 私と、お付き合いしてください!」
「え」
アオイは目を見開いて私を見つめ、ポカンとして固まってしまった。その後、状況がやっと飲み込めたのか、顔を真っ赤にして目を泳がせ始めた。
「つ、ツグミ……それ本気で言ってる?」
「冗談でこんなこと言わない!」
私は、アオイの肩をますます強く掴んで、唾を飛ばす勢いで叫んだ。アオイは面食らったように何度も瞬きをすると、額を抑えてゆっくりとしゃがみこんでしまった。
「あー、俺……最悪だ」
「え、あ、アオイ……?」
「ごめん、色々……ちょっと待って」
よく見ると、耳が真っ赤なのがわかる。顔は隠してしまっているけど、たぶん真っ赤なままだろう。その上、なんだか悔しそうに唸っている。
「……あのさ。もしかして……最近ツグミが元気なかったのって、俺のせいか?」
「えっ! 私、元気なかった?」
隠していたつもりだった私は、アオイが当たり前のように気づいていたことに驚いてしまった。アオイは頷いて立ち上がると、しっかりと私と目を合わせた
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