たまにはこんな日も
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せめてもの優しさだと、ベッドの上を指定されたのはいい。けれど正座はもって三十分あたりが限度だ。隣の彼にはそもそもの文化が違う分、殊更にキツイだろう。
「はー、やっとか」
「終わったね」
じりじりと脚の内部に広がる痺れのせいで、後半は大分聞き流していたお小言。ようやくお説教から開放され、二人揃って息を吐き出した。さて、この痛みはどうやって解消しようか。マッサージでもすればいいのかもしれないが、敢えて刺激を与えたくはない。一先ず、時間経過で少しずつ治そう。
「ぐっ……」
ゆっくり体の前方へ両足を伸ばすわたしの横から、何とも表現し難い声が聞こえた。顔をそちらへ向ければ、平常通りに動かしたか触ったか、彼が悶絶している。そうなるよね、と胸の内で同意しつつ、自分の爪先へ視線を戻す。上下に軽く動かして、収まってきたら軽めに揉み解すといいかもしれな、い――。
「ぎゃ、」
「こうなったら、お前さんも、道連れだ……!」
「やめ、ああああ」
ぬっと腕が視界に入った時にはもう遅かった。しっかりと左足を掴まれた挙句、雑なマッサージが始まってしまったのだ。前方へ上半身を倒した彼の右腕は完全にわたしを捉え、逃げようにも痺れが抜けていないため躊躇ってしまう。ならば。
「ていっ」
「おわ、生意気だな、っ」
仕返しに彼の脹脛あたりを指で強めに、何箇所もつついた。大袈裟な反応が目に入って、妙な達成感を抱くと同時にそうなるのも仕方がないことだと頷く。
「ニホンジン、ってのは、すげぇな」
「で、しょ?」
相変わらず途切れ途切れの会話をしながら、互いの脚で遊んでいる姿は傍から見ればさぞや奇妙に映ることだろう。個人的には楽しくなりつつあるが、やはり見られてしまった場合を想像するだけで色々と恐ろしい。どうかこの痺れが綺麗さっぱり消えるまでは誰も尋ねて来ませんように、と祈りながらわたしはとうとう、彼につられ笑い声をあげてしまうのだった。
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