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魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
無印編
第16話:最高のショー、その予約
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残っている誰もが、彼の考察に対し似たり寄ったりな顔をしている。まぁ普通に考えれば、そんなことできる訳はないという結論に至るだろう。

 そう、普通に考えれば…………だ。




***




 一方、話題の渦中にある颯人の方はと言うと…………。

「わっはっはっはっはっ!」
「待てこらぁぁぁぁっ!?」

 上機嫌で奏から逃げ続けていた。
 つい先程、無自覚とは言え奏に気を動転させられた時の鬱憤を晴らすかの如く、盛大に高笑いしながら二課本部の廊下を駆け抜け、奏がそれを必死に追いかける。

 しかし現状は奏に不利だった。何しろ奏は今ロングスカートのメイド服姿だ。走るのには適していない。寧ろここまで颯人についてこれたのが奇跡である。

 案の定、奏は徐々に颯人から引き離されていた。
 いつものパターンで言えば、このまま颯人に逃げられて奏が地団太を踏むのが常であった。

 しかし、今回は違った。奏は徐に硬貨を二枚取り出すと、それを渾身の力を込めて颯人に向けて投擲したのである。

「逃がすかおらぁぁぁぁぁっ!?」

 奏が投擲した硬貨は真っすぐ颯人に向け飛んでいく。颯人はそれに気付く事なく――――

「いぃってぇぇっ?!」

 背中に思いっきり硬貨が直撃し足が止まった。

 それを見て奏が勝ち誇った笑みを浮かべるが、ここで奏も予想していなかった事態になる。
 奏が投げた硬貨が直撃した痛みで足が止まった際、足を(もつ)れさせる颯人。そのまま彼はよろけながらも進み続け、止まる事も出来ず壁に頭から激突した。

「あいだっ?!」
「あっ!? 颯人ッ!?」

 この展開は予想外だったのか、奏は笑みを引っ込めて頭を押さえて蹲る颯人に近付いた。彼の事を表面上だけでも知っている者であれば演技を疑って近付くのを躊躇いそうなものだが、今彼が壁に激突した時の音が冗談では済まされないレベルであることに気付いている奏はその可能性を考慮せず颯人を心配して近付く。

 果たして、彼は本当に壁に激突しているらしく奏が近付いても何のアクションも起こさなかった。
 額を抑えている颯人の肩に奏が優しく手を掛ける。

「大丈夫か颯人?」
「う〜、大事は無いけどめっちゃイテェ」
「立てるか? ほら、そこにベンチあるから」

 奏のエスコートで近くのベンチに座る颯人。
 彼を座らせた奏は、颯人の足止めに貢献した硬貨で冷えた缶ジュースを買って颯人に渡した。

「ほら、これで冷やしな」
「あ〜、悪い」
「気にすんなって。こっちも悪かった」
「いや、それは別にいいんだけどよ、あんなの何処で覚えた?」

 颯人の記憶にある限り、奏があんな事をした覚えはない。どう考えてもここ最近で覚えた技術である。

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