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東京の鯉女
第二章
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「私阪神ファンになってたかも知れないわ」
「阪神には結構選手獲られてるのに」
「金本さんとかね」
「あと新井さんも一時だったけれど」
「それでもなのね」
「阪神に選手獲られてもね」
 フリーエージェントでだ、一時期阪神はこれに積極的であり広島からも選手を獲得していたのだ。それも看板選手を。
「腹立たないしね」
「それよね」
「別に阪神に選手獲られてもね」
「不思議と腹立たないのよね」
「むしろあっちでも頑張って来いってね」
「そうなるわね」
「そうでしょ、ただこれがね」 
 少しむっとなってだ、すみれはこうも言った。更衣室で私服から制服に着替えつつ同僚達にさらに話していく。
「巨人だとね」
「腹立つわよね」
「東京のど真ん中ででん、ってドーム構えていてね」
「いつも偉そうにしててね」
「もう何様って感じよね」
「何かっていうと盟主風吹かしてるけれど」
「もう黄金時代なんてないじゃない」
 球界の盟主なぞおこがましい、巨人は球界どころか日本の癌である。こう言うべき忌まわしい存在であるのだ。
「それこそ」
「そうそう、九連覇とかね」
「もう有り得ないし」
「何時まで王長嶋の時代なのよ」
「頭その頃で止まってるわよね」
「テレビに出て来るファンとかね」
「いるわよね、タレントで」
 公共の電波を使って害毒を垂れ流しているのだ、これではニュース番組でダイオキシンの誤報を流してキャスターと同じであろう。
「ガチャ目でスキンヘッドの奴とか」
「私あいつ大嫌い」
「私もよ、モラルないしね」
「浮気された人に浮気されたお前が悪いだしね」
「北朝鮮の核兵器は武士の刀とか言うし」
「あいつどうかしてるでしょ」
「あいつの実家のお寿司屋さんとか絶対に行きたくないわ」
 それこそというのだ。
「巨人以外のチームは全部憎んでるとか」
「そのまま北朝鮮じゃない」
「あんな奴テレビに出て欲しくないわよね」
「あと長嶋さん大好きなやけに顔がむくんだ爺」
「あいつも腹立つわね」
「プライベートだと凄い態度悪いらしいわね」
「あの人ね」
 すみれもこの者について話した、かつてアメリカを横断する特別番組でもレギュラーであった男である。
「昔カープが優勝した時にとんでもないこと言ったのよね」
「そうそう、まだ巨人の優勝諦めてないってね」
「カープの選手の人達が乗った飛行機が落ちるかも知れないとか」
「下種よね」
「最低な考えよね」
「だからさっきの人もこの人もテレビに出たら」
 その時はというのだ。
「すぐにチャンネル替えるわ」
「見ても不愉快になるだけだしね」
「あと落語家でもいるわよね」
「しゃもじ持って他の人の家に上がり込んでご飯漁るだけが芸の奴ね」
「あいつも品性ないわよね」
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