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遊戯王BV〜摩天楼の四方山話〜
ターン20 独善たる執行者たち
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トであるということすら彼女に明かしていない。秘密というわけではないのだが、この友人の趣味は読書で運動神経はからっきしという典型的な文学少女。それなりに激しいスポーツとしての一面も持つデュエルモンスターズの話をするのは、少女にとっても多少の遠慮があった。
 そもそも先述したように少女自身が対外的には「BV」、ひいてはデュエルモンスターズによって転校を余儀なくされた犠牲者の身。そういった目で見られている自覚を持ちつつデュエルモンスターズが大好きであると公言できないできない程度には、幸か不幸か少女は場の空気を読む能力に長けていたのだ。だから目の前の新しい友人も、普段は完全なる善意から少女の前でデュエルポリスやカードの話をすることは避けていた。今日に限っては、興奮が理性を打ち消したのだ。
 そんなぎこちない返事には、気づいているのかいないのか。頬を紅潮させた竹丸が日頃大人しい彼女にしては珍しく、身を乗り出さんばかりにまくしたてる。

「凄いよね、あの人!外国の最前線で働く格好いい女性、いいなあ、憧れちゃう……」

 うっとりと呟くその姿に、まだ人生経験の浅く話を流す技能の足りていない少女はなんと返したものかと返答に困る。そして迷った末に、無難な質問でお茶を濁すことにした。

「で、でも竹丸さん。そんな話、どこから聞いたんですか?昨日のニュースにはそんなこと一言もなかったですが」
「あのね、八卦ちゃん。実は私、直接その人を見ちゃったの!本屋さんに行く途中でケーキ屋さんの前に人だかりができてたから、なんだろうなあと思ったら」
「へ、へえ……」

 ますます自分の笑顔がぎこちなくなっていくのを自覚しつつも、少女はしかしそれを止められなかった。しかし幸いなことに、目の前の相手はそれすらも気づかないほどに興奮していた。

「それでね、それでね!私、お父さんとお母さんからずっと危ないから近づいちゃダメって言われてたからデュエルって見たことなかったんだけど。機械のモンスターがいきなり出てきたり、しかもそれが動き出したり!相手の怖そうなモンスターが攻撃してきても落ち着いて構えて、もう本当に格好いいなあって!」

 そう語る友人の顔と混じりけなしの光に満ちたその瞳を正面から見て、始めてデュエルモンスターズに触れた時の自分もきっとこんな調子だったんだろうとは容易に想像がついた。その感覚を誰よりも理解できる少女だからこそ、この友人とそれを共有したい。自分にもよく分かる、その言葉を口に出すことができたらどれほどいいだろう。
 無論、その感情を止める者など最初から誰もいない。ただ少女自身が幼い感性の中で、どこか負い目と後ろめたさを感じているだけのことだ。
 曰く、自分は被害者だというのに、デュエルモンスターズを楽しんでいていいのだろうか?不謹慎、とまで考え
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