第二部
第一章 〜暗雲〜
八十九 〜暴かれる真相〜
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「知識だけというならば、な」
『泣いて馬謖を斬る』、私でも知る有名な故事。
尤も、あの朱里がそのような真似を出来るとは思わぬが。
「とても才気煥発で、馬氏一族でも目立つ存在なんです。……ただ、自信過剰気味で、よく周囲には窘められていますけど」
そこまで言われれば、もう十分だ。
「つまり、覆面の軍師は馬謖ではないか。そう思うのだな?」
「そうですわ」
「……そうか。だが、本心から荷担しているとも思えぬという根拠は何か?」
「まず、あの姉妹はとても仲良しなんです。だから、姉が好まない事を妹がするとも思えません」
「他にもあるのだな?」
「はい。自信過剰、と申し上げた通りで、蔡瑁などは見下していました。それで、劉表様への仕官が叶っていなかったのですが」
「……では、仕官を条件に荷担していると?」
「いえ」
と、紫苑の表情が厳しくなる。
「恐らくですけど。姉を人質に取られているのではないかと思います」
「成る程。従わなければ命を奪う……か」
「蔡瑁ならば、そのぐらいの事はやりかねませんわ」
何処までも卑劣漢なのであろう。
……許せぬ。
「疾風が戻ったら、すぐに襄陽を探らせよう。それで、真相が判明する筈だ」
「ええ。……歳三様」
「わかっている。仮に紫苑の推測通りだったとしても、馬謖を守って欲しいというのだな?」
「はい。才能もありますし、性根も悪い子ではありません。蔡瑁に巻き込まれたというだけで死なせたくありません」
「……うむ」
とにかく、事の次第を調べるよりあるまい。
「紫苑。この事、構えて他に漏らすな」
「勿論ですわ」
風が知ればどう思うかはわからぬが、その時に言い聞かせるよりあるまい。
この程度の事で、己を見失う事はあるまいが。
そして、翌日。
睡蓮を欠いた軍が、長沙の郡城へと帰還。
あれだけの威風を誇っていた軍も、見る影もない有様だった。
「祭、飛燕。……まずは、城内へ」
「…………」
「……はっ」
流石に精気を欠いたままか。
だが、真相は話さねばなるまい。
二人には酷ではあるが、それが私の務めでもあろう。
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