暁 〜小説投稿サイト〜
至誠一貫
第二部
第一章 〜暗雲〜
八十九 〜暴かれる真相〜
[5/6]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
すよ」
 いつになく、風も怒っている。
 我らへの仕打ちに加え、軍師としての矜恃もあるようだ。
「主。蔡和の事は仰せの通りとは存じますが。この後は如何なさいます?」
「うむ。明命、祭らの帰還はどれほど要する見込みか?」
「はい。兵の動揺が激しく、逃亡も相次いでいますが……。祭さまや飛燕さまなら、明日には戻られるかと」
「よし。では休養を取ったら、祭らのところに向かうが良い」
「いえ、大丈夫です。直ちに向かいます」
 無理をするな、と言っても無駄であろう。
 そう思っているうちに、明命は姿を消した。
「さて、罠にかかったまま死を待つ事もあるまい。禀、風」
「御意。今後の戦略を早急に立てます」
「桜花(士燮)さんや山吹(糜竺)ちゃんにも使者を出しますねー」
「うむ。鈴々、すぐに呉に向かい、朱里を連れて参れ。雪蓮には書簡を認める」
「わかったのだ!」
 愛紗らは城下の警備と、軍の方をと自発的に向かっていく。
 ……人材が揃っている筈の我が軍でも、こうなると存外人手が足りぬものだ。
 今のままでは特に、禀と風に負担をかけ過ぎてしまう。
 朱里が戻れば一息つけるのであろうが……。
「歳三様。少し、宜しいでしょうか?」
「紫苑。軍務に向かったのではないか?」
「それは、彩ちゃんや愛紗ちゃん達がいれば大丈夫ですわ。それよりも、気になる事がありまして」
「聞こう」
「ありがとうございます」
 そう言いながら、紫苑は声を潜める。
 ……皆にも聞かせられぬ話、という事か。
「睡蓮様を罠にかけた軍師の事です」
「心当たりがあると申すか?」
「確証はありませんわ。だから、迂闊に口には出来ませんでした」
「そうか。ならばこの事、私の胸に収めておけば良いのだな?」
「はい、ご配慮に感謝致します」
 紫苑は頭を下げた。
「心当たりと申したな? その者、劉表麾下という事か?」
「いえ。私の推測が正しければですが……その覆面の軍師は、本心から蔡瑁に荷担している訳ではないと思います」
「どういう事だ?」
「歳三様は、馬氏一族の事はご存じでしょうか?」
 荊州の馬氏……か。
 私の知識通りならば、あの馬氏以外にあるまい。
「長男、いや長女が白眉の者か?」
「仰せの通りです。やはり、ご存じでしたか」
「いや、面識はない。ただ、知識としてはある」
 紫苑は頷く。
「馬氏一族の長女は、歳三様がご存じの馬良という子ですわ。襄陽にて、劉表様にお仕えしています」
「ふむ」
「……ただ、あの子はこういった悪辣な事は好みませんし、そもそも策士ではありませんわ。ですから、あの軍師と同一という可能性はないと思います」
 私は黙って、紫苑の話に耳を傾ける。
「その子の妹に、馬謖という子がいるのですが……ご存じですわね、きっと」
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ