第二部
第一章 〜暗雲〜
八十九 〜暴かれる真相〜
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、事情を知っている星以外、皆呆然としている。
「お兄さん。それがお兄さんの判断なのですね?」
「そうだ。城下に火を放ち、多数の庶人を巻き添えにしようとした罪、軽からず」
蔡和を睨み付ける。
「明命、こやつも関わっている事は明白。好きに致せ」
「……宜しいのですか?」
「うむ。何も言わぬのであればもう用はない」
「ありがとうございます」
明命は頷くと、背にした刀を抜き放つ。
「ひぃっ!」
「睡蓮さまの敵、取らせていただきます」
冷たい目で蔡和を見、剣を喉元に突き付ける。
その刃先が食い込み、血が流れ出した。
「ま、待て! 待ってくれ!」
「何を待てと言うのですか? 睡蓮さまを生き返らせていただけるのですか?」
「そ、それは無理だ! だが、言う、知っている事は全て話す!」
落ちたな。
「明命」
「……わかりました」
頷き、刀を納める明命。
「蔡和。では洗いざらい吐け」
「は、はい……」
涙と涎で酷い顔をしたまま、蔡和は項垂れた。
「こ、此度の事、我が従兄弟の蔡瑁より指示を受けました。孫堅が事も、です」
「貴様……。孫堅殿を呼び捨てにするとは」
今度は、彩が剣に手をかけた。
「止せ」
「し、しかし殿!」
「……二度は申さぬぞ」
「……は」
蔡和は、どうやら歯の根が合わぬらしい。
「続けよ」
「そ、それで私は隙を見てこの長沙を火の海にせよ、と。その上で庶人に扮した者を襄陽に駆け込ませ、土方軍の非道を訴えよと」
「何だと!」
「許せないのだ!」
「愛紗、鈴々。同じ事を言わせるな。……それで?」
「そして、孫堅は恐らく別行動を取るだろうから、零陵郡に攻め入ったところで罠にかけ、討ち取れと」
「…………」
皆の顔が、怒りに満ちている。
「だが、零陵には太守が健在であろう? そのような無法、罷り通る訳がなかろう」
「い、いえ。零陵太守劉度様と、武陵太守金旋様は我らと手を結んでいます。ですから兵も賊に扮して加わっていた筈です」
……蔡和の話が真であれば、睡蓮は大がかりな罠に飛び込んだ格好になってしまったという事か。
「そして、指揮を執っていたのは我が一族の蔡中、それと呂公です。そ、それと」
「早く申せ!」
此処まで冷静であった筈の星まで、怒りで声を荒げている。
「ひっ! あ、あの、覆面をした軍師、これが作戦の取り纏めを」
「何者だ?」
「わ、わかりません。私は顔を見た事もなければ、名も知らされていません!」
「他には?」
「そ、それだけです! 本当です!」
それを聞き、私は腰を上げる。
そして、兼定を抜いた。
「や、約束が違うぞ! 話せば助けると!」
「……言った覚えはないが」
「卑怯者め! 外道!」
それには答えず、蔡和の前に立つ。
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