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 嫌なことは数えても減らない。むしろその行為が引き金となり、気付かずに済んだものまで増やす羽目になるだろう。

「まずは種火集めでしょ? 種、骨、爪……ああもう再臨素材全部! 収集大変!」

 試しに浮かんだものをと声に出したはいいが、予想通りだった。悩む間もなく、すらすらと流れるように次が飛び出してくる。慣れたとはいえ、何時の間にやら部屋に忍び込まれているのを不愉快に感じる日もあるし、人類最後のなんて枕詞が付く肩書きを重苦しく思うことがないとは言えない。レイシフトや戦いに伴う命の駆け引きに対して、感情が麻痺してしまうのではないかという恐怖、それから――。

「マスターとサーヴァント……ただの人間と英霊、とか」

 黙っていてくれればこちらも知らないままで居られたのに、と何度唇を噛み締めたことか。過去のマスターと師匠を含めた”女”の存在。中途半端に匂わせるだけ匂わせてから口を噤むなんて性質が悪い。それが例え故意ではないのだと分かっていても、心の中では罵ってしまうのだ。

「好きに、なっちゃったから」

 なんだか悔しいから泣くつもりも、この気持ちを伝える気もない。決意にも似た思いは道化のようで悲しいと自嘲せざるを得ないが、いつか別れる日が来るのは必至だった。ならば小娘らしく、胸に秘めて大事に取っておこう、色褪せないように。ああでも、また何処かで君が召喚されることがあったなら、なんて考えてしまったら。

「プロト」

 名を呼べど、ここは自分一人だけのマイルーム。誰にも聞かれないし、届かないから大丈夫。すう、と小さく息を吸う。焦る心音を他所に、発された言葉は震えずか細くもなく、静かに広がっていった。
 
 君が好きです、どこか犬っぽいところも戦闘中の荒っぽさも、気前の良さや幼さの覗く笑顔だって。ねえ、お願いがあるんだ。わたしのことはね――だから綺麗に忘れてください。
 
 
 
 

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