「私の前だけにしておいてね」
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休息を取るようにとの指示を受け、鼻歌交じりに自室へと向かう。もうすぐだというところで、廊下の所々に設置されているベンチに見慣れた英霊の姿を見留めた。
マスターになってばかりの頃からずっと共に在ってくれた彼は、マイルームへ呼んだ際に自分が席を外していると必ずそこで出迎えてくれるのだ。ところが、今日は溌剌とした声もカラりとした笑顔もない。
「……寝てる。めずらし、ふふ」
そっと近づいて覗き込んでみれば、静かな寝息が聞こえてくるではないか。随分と気を緩めているようで壁に凭れ掛かっている横顔には少々幼さが滲む。可愛い、などとはこれまた内緒にしておく必要があるけれども、折角の機会にじっくり眺めさせてもらおう。
「ん、やっぱり柔らかくはないのかあ」
出来心で軽く頬を突いてみたものの、そこは男である、指先で僅かに押し込んだだけで終わってしまった。触り心地が良ければ起きるまで堪能させてもらおうと期待していた分、口惜しい。
肩を竦めている内に、目覚めを促されたサーヴァントが覚束ないトーンで呼びかけてくる。我慢するべきだったなと反省しながら、信頼する男の耳元へ口を寄せた。
「貴重な寝顔をごちそうさま。でもプロト、」
こういうのはさ――。
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