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真・恋姫†無双~現代若人の歩み、佇み~
第二章:空に手を伸ばすこと その弐
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である。顔についた賊の返り血を拭いつつしかと前を見据えて武器の構えを崩していないのは褒めるべきではあるが。

 互いが探り探り緊張の切れ目を探している。仁ノ助たちが一瞬でもタイミングを間違えれば賊共が一斉に突っ込んできて、賊共が間違えれば仁ノ助が一気に吶喊してくる。どちらとしても、両者は次の攻勢で勝負を決める気であった。攻撃の意図を探らせないように静寂を保ち続けていく。森林に近いこの平原は今、木の葉一つも動かない無風状態であったが、両陣営が放つ殺意に圧されてか徐々に大地が歪むように感じられた。まるで大地を大勢の人間が動いているかのようで・・・・・・大勢?

 緊張の糸が途切れたかのように賊たちがあらぬ方向を指して喚いている。官軍であると。
 その声がさした方向へちらりと目をやると、大地の先から大きな土煙が迫っているのが見えた。それに呼応してか六町|《≒660メートル》ほど離れたこの場所でも大地が震えるのが分かる。普通なら勘を研ぎ澄ませれば感づけるのかもしれないが、互いの武器に意識を向けすぎたのかこの距離になるまで気づかなかったらしい。
 驚き焦る賊たちの間隙を一気に突くのならばこの好機を利用しない筈が無い。仁ノ助はクレイモアを袈裟懸けを狙うように刀を構え直しながら目の前で狼狽する賊に突っ込んだ。こちらに対する意識が途切れていたのか、賊は体を深く斬られ夥しい血を撒き散らすときに至って初めて仁ノ助の攻撃を悟ったようだった。斜めに振り下ろされたクレイモアの動きを止めずに、左に一回転しながら隣に立つ賊の胸部を切り裂き、さらに回転の反動を利用するように剣を右斜め上に向かって薙ぐ。胸部を切り裂かれた男は不運にも頚部を切断されて、間抜けな表情をした頭部が赤黒い血を切断面から出しながら遠くへ飛んでいく。

 賊達は突然自分達に振りかかる事になった災禍に鋭く悪態をつきながら、森林から出てきた者達は森林の方へと悪運が尽きぬことを願いながら逃走し、運悪くそちらの方へ逃れられない者達は一目散に東に向かって逃走した。それを易々と逃がす気は無いのか仁ノ助が逃走する者達を後ろから追っていこうとする。一方で詩花は緊張感と疲労でいっぱいになったのか、戟の石突を地に立てながら肩を荒げてで息を整えている。

(やはり追撃は出来ないな、これはあの軍隊の仕事だ)

 彼の思いを応えるかのように賊共が指差した方向からたくさんの馬蹄が大地を駆ける音がする。先行してきた部隊なのであろう、騎兵で固めたそれは徐々に姿を明らかにしていった。機動力と突破力をいかすためには馬の足、そして装備が軽いことが必須。この時代の騎兵ははっきりいってしまえば、重装騎兵を除いて歩兵よりも軽装なのである。密集隊形で固まった歩兵に突っ込めば動きが止められてすぐに戟や剣の餌食となる。
また馬上からの攻撃は止め
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