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真・恋姫†無双~現代若人の歩み、佇み~
第二章:空に手を伸ばすこと その弐
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えて口をぱくぱくと動かす。刀を離して傷口に手をやろうとするも力が入らない様子であり、血がさらに流れ出す。そして力尽きたかのように地面に倒れ付すとぴくぴくと痙攣を始め、男の体は死後硬直の準備を始めた。男の血の噴水の彼女の体を赤く染めるが、嫌悪感に耐えるかのように表情は作られていない。

 仁ノ助と詩花は素早く馬の傍に戻って互いに背中を預けた。
 あっという間に二人の仲間が殺されたのを見て賊達はどよめく。それでも数的優位が変わらないのか、
獲物が持つ長い武器の餌食にならないように遠巻きから威圧し始めた。
 かくして一つの膠着状態が生まれるのである。




 膠着状態から半刻が過ぎようとしていた。
 あれから数人が襲い掛かってきたがいずれも二人に殺されている。襲い掛かってくる度に刃が煌いて、透き通った空に断末魔を響かせていた。仁ノ助が難なく賊を斬殺するのに比べて、詩花の方は未だ戦いに慣れていないのか、一人ずつ丁寧に攻撃を裁いて相手の隙を捉える戦い方で凌いでいる。そろそろこちらのうちの一人が殺しの初心者だという事がばれているはず。彼の予想は的中しており、賊達は自分達の優位を崩そうとせずに徐々に包囲陣を狭めている。また賊たちの中でもそれなりに腕に覚えがある者達が、一人また一人と刃を交わしては包囲に戻る戦法をしてきている。決して陣を崩さずにこちらを追い詰めている賊達は、追い詰めた猫を絞め殺すかのように余裕を見せはじめている。
 それを見て仁ノ助の表情に不敵な笑みが毀れ出る。彼の一人旅でこのような事態に陥ったのは何度となくあり、そのいずれもで自分は機転を利かせて生き抜いてきた。此度のそれはこれらの歴史の中と比べるとちょろいものだ。彼は賊共の余裕を嘲るかのよう体の力を抜くと、刀身に被った血脂を払うように刀を振るい、始めに裁いた賊を殺したやり方を髣髴させるかのように、両手で柄を握り上段に構える。ゆっくりと脇をしめて刃が煌くように刀の角度を調整する。そうすると刃は太陽の光を受けて切っ先を獲物を欲するように輝かせた。その対象が自分達であることを包囲する賊達は悟り、何人かの者は最初に切断された男の遺骸をちらりと見た。あのようになるのかとたじろぎを見せながら包囲陣を狭める行動を一時中断した。

 しかし仁ノ助は動けない。詩花が息を切らしているのがわかるからだ。
 斬った数は少ないが賊共の攻撃を完全にかわすことが難しいのだろう、頬には小さな掠り傷が出来ており一筋の血が首まで伝っていた。丁寧に狩ろうと意識しすぎたのか攻撃の一つ一つが正確ではあるが遅すぎる。それによってあっさりと殺すことができたのは最初の一人のみであった。後は全て賊自身が隙を晒すのを待ち続けて、晒した瞬間に刃を振るう攻撃手法である。待ちに徹する時間が長いとこのように息を切らすのは当たり前の話
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