暁 〜小説投稿サイト〜
真・恋姫†無双~現代若人の歩み、佇み~
第二章:空に手を伸ばすこと その弐
[3/7]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
から抜け出したいのかオーバー気味に言葉を出している。仁ノ助は彼女の頼みを受け入れることに慣れきってしまったのか。彼女の当てずっぽうな答えに呆れながらも、
それに異は唱えずに頷いて、空を飛ぶ鳥をみつめた。
 本来なら北西に抜ける予定だったが、渡り鳥は北東の方へと向かっている。風はさらに強さと寒さを増していき、冬山の真骨頂を見せ始めている。纏った外套がばたばたと風に揺れて、詩花はついに悲鳴をこぼして寒さに耐え始めた。もう我慢の限界なのだろう、仁ノ助の言葉を待たないうちに北東方面に向かって下山を始めた。金毘も我慢が出来ない彼女の意をよく知っており、なるべく風を受けないように気を使わせながら足を速めている。山中に置いてけぼりにされると身の危険がさらに増すと分かっているのか、仁ノ助も自分が乗る馬を操ってすばやく彼女の後を追い始めたーーーーー。





第二章:空に手を伸ばすこと その弐





 山を降りた二人はどういう訳か麓に広がる森林の中を突っ切って平原に出てしまった。途中から寒さを逃れるために走っていたのではなく、どちらが早く走れるか互いに対抗していた気がする。彼女に追いついて文句を言う前に前方の方から土煙が上がった。大地を震わす音も聞こえており、更には命令のような怒号が飛んでくる。何を叫んだのかはわからないが、尋常ではない様子で迫ってくる土煙の中からその正体を突き止めた。
 煙を上げているのは三十は数えられそうな群れた男達であり、汚らわしい風体とちらちらとはためく黄色の頭巾、そして手に持ったぼろぼろの刀が、彼が群れで追いはぎをする黄巾賊であることがすぐにわかった。
顔を顰めて踵を返し二人で逃げようとするも、森の中からさらに二十人はいようかという数の賊が出てきた。
元々五十人だったその賊は味方を二つに分けて、一つは追い込みの役を徹し、もう一つは逃げる獲物の行く手を阻むやり方で商人らを狩っていたのであろう。何やら組織的にもみえる動きでこちらの周囲を包囲してくる。包囲が完成していない間に突破しようとすれば出来るかもしれないが、弱り目に祟り目というべきか、自分の馬が思ったよりも疲弊しているのが馬の荒げた息よりわかった。先ほどの競争で体力をかなり消耗したのであろう。これから先の戦ではこの馬では使い物にならないと考えながらも、仁ノ助は使い物にならない馬から降りて腰に差したクレイモアを抜いた。

「ちょっとあんた、正気なの!?やるんなら馬上でやりなさいよ!」
「こうも包囲されては馬の機動力が殺されてしまう。それに俺の馬はお前のより利口ではない。乗って戦えば足手まといとなる」
「あああもう!!しょうがないわね!!」

 詩花は投げやりな声を出して手に持った戟を一度振るうと、開き直った様子で金毘から降りる。馬上での有利を放棄する
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ