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その日、全てが始まった
第1章:出会い
第04話 『動き出した歯車』
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、何か言われるかもしれないって思うと……」
「なるほど……。俺達の事、信じられなかったか?」

 祐治の言葉に、拓巳はゆっくりと首を横に振った。

「逆だよ。信じてるから……辛かった。皆んなと、別れるのが……」
「そうだったのか……」

 祐治は、少し俯いた。

「……確かに、ここまで一緒にバンドやってきた奴が、突然いなくなるってのは信じ難いな」

 大樹がそう言った。

「僕も同じさ。大切な仲間がいなくなるのは辛いよ」

 でも、と言って結弦は言った。

「本当に辛いのは、何も言わずに居なくなられることなんだよ」
「……ありがとう」

 そう言った拓巳の瞳からは、涙が溢れた。

「俺達は、バンド『Crescendo』の仲間だろ? 当然のことさ」

 祐治がそう、声をかけた。

「そうだぜ。仮に遠く離れても、一緒に演奏したって事実は消えないはずだ」

 雅人もそう言った。

「……ありがとう。本当に……ありがとう」

 そう言って、拓巳は泣き続ける。

「あの……」

 そこへ、ティーポットとティーカップを乗せたお盆を持った、つぐみが現れた。

「ん、ああ。ありがとう。カップは俺の前の彼のところに置いてあげて。で、ポットは俺の前にお願い」

 つぐみは、洸夜に言われた通りに、ティーカップを拓巳の前に置き、ティーポットを洸夜の前に置いた。
 そして、『ごゆっくり』という言葉とともに、厨房へと入っていった。

「さて、1段落着いたのかな?」

 洸夜の言葉に、少し落ち着いた拓巳は頷いた。

「取り敢えずさ???」

 洸夜は、そう言ってティーポットを掴むと、拓巳の前にあるティーカップに中身を注ぎながらこう続けた。

拓巳(・・)、お茶でも飲んで話でもしようか」
「え?」

 突然の事に、拓巳は言葉を失った。

「な、なんでだよ……。お前は部外者だから、話には参加しないんじゃなかったのかよ」

 雅人が洸夜へと問いかけた。

「そうだね。『Crescendo』内での事柄だったから、俺は傍観してた」
「じゃあなんで」
「まだ、俺がここに呼ばれた理由を話してもらってないからだよ」

 その言葉に、一同はハッとした。

「たしかに……氷川君の言う通り、氷川君が呼ばれた理由を聞いてないね」
「そういう事です。で、俺を今日此処へ呼んだ理由はなんだ?」

 少し躊躇うような動作を見せた後、拓巳はそっと口を開いた。

「彼に……俺の後任として『Crescendo』のベースをやってもらう」

 その言葉に、他のメンバーは慄いた。

「洸夜が……か?」

 今まで冷静を貫いてきた祐治ですら、拓巳の一言に驚きを隠せなかった。

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