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温泉ゴリラ
第二章

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 客はまだ誰もが呆然となっていた、それは白銀も同じでお風呂から上がってから温泉の者にゴリラのことを聞いたが。
 温泉の者は彼にあっさりと答えた。
「うちの温泉のマスコットゴローちゃんですよ」
「マスコット!?」
「はい、元々はある旅館のペットでしたがゴリラは大人しいし賢いし完全なベジタリアンなので放し飼いにしてまして」
 それでというのだ。
「温泉も好きでよく入ってるんですよ」
「今みたいにですか」
「毎日。ゴリラは食べ方も奇麗ですし言うこともないですね」
「そんなお話はじめて聞きましたけれど」
「お話聞いてませんでした?この温泉にはゴリラがいるって」
「今はじめて聞きました」
 白銀は温泉の者に憮然として答えた。
「本当に」
「そうでしたか、ですが実は」
「そういうことですか」
「ご存知ないなら覚えておいて下さいね」
 何と白銀も他の客もゴリラのことを知らなかっただけだった、それで驚いただけだった。
 だが温泉の者からゴリラと一緒に入ると根拠不明だが運がよくなると言われて悪い気はしなかった。それで白銀は夜に居酒屋で飲みつつ共に飲む伊東に話した。
「まあ運がよくなるならな」
「それでいいか」
「ああ、それならな」
 こう言うのだった。
「別にいいか」
「そうか、じゃあそういうことでな」
「いいってことでか」
「飲もうな、今は」
「それでいいか」
「空気自体は悪くなかっただろ」
「別にな」
 白銀は伊東の今の言葉に飲みつつ応えた。
「感じないな」
「ならそれでいいだろ、じゃあ今はな」
「飲むか」
「そうしような、
「そうか、じゃあ飲んで」
 実際に好きな焼酎を飲んでだ、白銀は言った。
「〆にバナナ食うか」
「そういえばデザートのパフェに入ってるな」
「それ食ってまた風呂に入ろうな」
 こうした話をして実際にまた二人で温泉に入ると先程とは別の湯だったのにまたゴリラが入っていた、だが白銀はゴリラに驚かずむしろ親しみを以て共に入った。そうして温泉を心ゆくまで楽しんだのだった。


温泉ゴリラ   完


                  2020・1・11
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