第1章:出会い
第02話 『剥離』
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だったのか。祐治の奴、大分凄いことしてたんだな」
そう洸夜は、誰にとなく言った。
「それよりも、洸夜はまたバンドをやるの?」
「それ私も気になるなー」
紗夜のその一言で、洸夜は歩みを止めた。
「なん……で?」
2人の方へ振り向いた彼の瞳は、光は無く狂気さと冷徹さが同時に含まれたものであった。
「……今の俺に、バンドを続ける理由があると思うか?」
表情を一切変えることなく、洸夜は言い切った。
「悪いが俺はもう……音楽が好きじゃない。嫌いなんだ。バカみたいに、音楽に熱中していたあの頃とは……もう、違うんだ」
そして洸夜は、顔を背けた。
「……嘘だよ」
そう告げたのは、日菜だった。
「さっきのお兄ちゃんは、心の奥底から楽しんでたよ。それに、今だって辛そうだった……」
「……」
洸夜は、黙り込んだまま日菜の話を聞いていた。
「黙ったままって事は、当たってるのね」
「……」
紗夜に問われても尚、洸夜は黙ったままであった。
「どうして、そんな嘘を……」
「関係……無いだろ……」
洸夜は、絞り出したような、弱々しい声で反論した。
「関係あるわ!」
「そうだよ。私とお姉ちゃんは、お兄ちゃんの事を1番側で見てきたんだよ?」
紗夜に続いて日菜も洸夜へと言葉を投げかける。
洸夜は、片手で額を抑える様な体勢で俯いた。
その彼の脳裏には、今の2人の会話が幾度と無く響き渡っていた。
そして、彼の呼吸は徐々に乱れ過呼吸になり、皮膚からは大量に発汗していった。
「洸夜……?」
紗夜が心配そうな声をかける。
「ど、どうかしたの?」
続けて日菜も心配そうに尋ねる。
「……やめてくれやめてくれやめてくれやめてくれ」
彼は早口で何度も何度も呟いていた。
「ちょっと、本当に大丈夫なの?」
そう言って、紗夜が洸夜の肩に触れた瞬間、彼の中の何かが切れた。
「???やめてくれ!」
彼は叫ぶと、紗夜の手を振り払った。
「洸……夜?」
あまりの出来事に、紗夜は理解が追いつかなかった。
それは、隣にいる日菜も同様であった。
「ハァ……ハァ……」
その肝心の洸夜は、荒い呼吸のまま、自身の目元を右手で覆って俯いていた。
「……帰ろう」
少し落ち着いてはいるが、相変わらず過呼吸の彼は2人にそう告げた。
そして、彼は歩き出した。
2人は、それに続いて恐る恐る歩き出す。
その後、3人は一切言葉を交わすことなく家へと到着した。
彼は、家に入ると直ぐに自室へと向かう。
そして、持っていた荷物を無造作に手放すと、力無くベット
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