暁 〜小説投稿サイト〜
その日、全てが始まった
第1章:出会い
第02話 『剥離』
[3/6]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
だったのか。祐治の奴、大分凄いことしてたんだな」

 そう洸夜は、誰にとなく言った。

「それよりも、洸夜はまたバンドをやるの?」
「それ私も気になるなー」

 紗夜のその一言で、洸夜は歩みを止めた。

「なん……で?」

 2人の方へ振り向いた彼の瞳は、光は無く狂気さと冷徹さが同時に含まれたものであった。

「……今の俺に、バンドを続ける理由があると思うか?」

 表情を一切変えることなく、洸夜は言い切った。

「悪いが俺はもう……音楽が好きじゃない。嫌いなんだ。バカみたいに、音楽に熱中していたあの頃とは……もう、違うんだ」

 そして洸夜は、顔を背けた。

「……嘘だよ」

 そう告げたのは、日菜だった。

「さっきのお兄ちゃんは、心の奥底から楽しんでたよ。それに、今だって辛そうだった……」
「……」

 洸夜は、黙り込んだまま日菜の話を聞いていた。

「黙ったままって事は、当たってるのね」
「……」

 紗夜に問われても尚、洸夜は黙ったままであった。

「どうして、そんな嘘を……」
「関係……無いだろ……」

 洸夜は、絞り出したような、弱々しい声で反論した。

「関係あるわ!」
「そうだよ。私とお姉ちゃんは、お兄ちゃんの事を1番側で見てきたんだよ?」

 紗夜に続いて日菜も洸夜へと言葉を投げかける。
 洸夜は、片手で額を抑える様な体勢で俯いた。
 その彼の脳裏には、今の2人の会話が幾度と無く響き渡っていた。
 そして、彼の呼吸は徐々に乱れ過呼吸になり、皮膚からは大量に発汗していった。

「洸夜……?」

 紗夜が心配そうな声をかける。

「ど、どうかしたの?」

 続けて日菜も心配そうに尋ねる。

「……やめてくれやめてくれやめてくれやめてくれ」

 彼は早口で何度も何度も呟いていた。

「ちょっと、本当に大丈夫なの?」

 そう言って、紗夜が洸夜の肩に触れた瞬間、彼の中の何かが切れた(・・・)

「???やめてくれ!」

 彼は叫ぶと、紗夜の手を振り払った。

「洸……夜?」

 あまりの出来事に、紗夜は理解が追いつかなかった。
 それは、隣にいる日菜も同様であった。

「ハァ……ハァ……」

 その肝心の洸夜は、荒い呼吸のまま、自身の目元を右手で覆って俯いていた。

「……帰ろう」

 少し落ち着いてはいるが、相変わらず過呼吸の彼は2人にそう告げた。
 そして、彼は歩き出した。
 2人は、それに続いて恐る恐る歩き出す。
 その後、3人は一切言葉を交わすことなく家へと到着した。

 彼は、家に入ると直ぐに自室へと向かう。
 そして、持っていた荷物を無造作に手放すと、力無くベット
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ