第1部
ロマリア〜シャンパーニの塔
なんだかんだで王様終了
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魔王に直接関係ないと思うのじゃが、十年以上前からここから遥か北にあるノアニールの町の情報が入って来ないのじゃよ。あの辺りは手ごわい魔物も多く、調査に行くにしてもわが国の兵士だけでは力不足でな。じゃがカンダタを退治したそなたらなら、きっとノアニールまでたどり着くことができると思ってな。じゃが、無理にとはいわぬ。まず何よりも魔王討伐のほうがわが国にとっても、世界にとっても緊要な問題じゃからな」
「ノアニール……」
宿屋の女将さんが口にした名前だ。確か女将さんの話だと、数年前から連絡が来ないって言ってたけど、そんなに前からだったなんて。
それよりもユウリの答えのほうが気になった。おそらく私の知るユウリなら、わざわざ旅に関係のないところなど、行かないと言うだろう。けれど、頼んでいるのは王様だ。どういう反応をするのか、私は思わずユウリを覗き見た。
「わかりました。王様の頼みとあらば是が非でも足を運ぶ所存でございます。近いうちに報告できるよう尽力します」
ユウリは、憂う王様を見据えて、そうきっぱりと言った。
それから彼は城を出るまで私たちに顔を向けなかったけれど、私はその後姿を見るたびに、王様になる前の勇者とは少し雰囲気が違うのを感じていた。
「ねえユウリ。一体どうしちゃったの? 王様の頼みとはいえノアニールに行くなんて」
ロマリアの城壁がかなり小さくなったころ、ずっと黙っていたユウリに、私は我慢できず質問した。
「お前の耳は節穴か。王が言ってただろ。ノアニールは十年以上音沙汰がないって」
それをいうなら目でしょ。とつっこみたかったけど、あまりにユウリが前向きなので、調子が狂ってこれ以上何もいえなくなってしまった。
ナギも私と同じことを考えていたのだろうか。疑うような目つきでユウリを眺める。
「ひょっとして王様になってる間に、だれか別の人に入れ替わったんじゃねーか?」
「ベギラマ。これでいいか?」
ごぉおおおぉぉぉっっっ!
「ぎゃあああああ!! わかった!! わかりました!! 疑ってすいませんでした!!」
炎に巻かれながら、ナギは懸命に謝る。偽者だと疑われたユウリは嘲るようにナギにホイミをかけたのだが、その様子はかなり奇妙だった。
「ユウリちゃん、ユウリちゃん♪ あとでお酒飲みに行ってもいい?」
シーラが今日稼いだお金の入った皮袋をこれ見よがしに突きつけ、ユウリに許しを請う。駄目だよシーラ、またあのときみたいにお金全部とられちゃうよ!
だが、ユウリはまたもや私の予想を裏切る発言をした。
「……あまり遅くなるなよ」
『ええええええええええええ!!!??』
私とナギは一斉に声を上げた。
何この優しいユウリ!? やっぱりどっかで頭でもぶつけておかしくなっちゃったんじゃない?! と声に出しそうになるのを
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