暁 〜小説投稿サイト〜
魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
無印編
第14話:それぞれのお悩み相談
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と颯人の胸倉を掴み上げた。目尻には涙が浮かび、憤怒の表情と相まって並の男であれば思わず後退ってしまうほどの勢いが今の翼にはあった。
 だが、颯人は全く意に介した様子を見せない。ただ静かに彼女を見つめ、黙って彼女の言葉に耳を傾けるだけだ。

「奏からあなたを奪うような真似はしたくない、でもあなたに奏を奪ってほしくもない! 私は一体どうすればいいって言うんですかッ!?」
「…………」
「──ッ!? 何とか言ってくださいよッ!?」

 依然として沈黙を保つ颯人の様子に、翼は胸倉を掴む手に力を籠める。そこで漸く颯人は表情を変化させた。

 それまでの無表情に近い顔から一転、柔らかな笑みを浮かべると胸倉を掴む翼の手を自身の手で優しく包む。

「そう、それでいいんだよ」
「えっ?」
「やっと自分の気持ちに正直になってくれたね。良かった良かった」
「あ、あの──?」

 正直、此処まで身勝手に怒鳴り散らしたのだから文句の一つや二つは飛んでくると思っていたのだが、予想に反して颯人から向けられたのは安堵の表情だった。その事が翼を困惑させ、たった今まで感じていた激情もどこかへと消えてしまっていた。

「ど、どういう、事ですか?」
「どういう事も何も、最初から言ってたじゃん? もっとオープンに接してくれていいよって」
「それは、そうですけど…………え?」
「え? じゃないよ。言葉通り、俺にも奏にも遠慮する必要はないって言ってんの」

 言いながら颯人は翼に胸倉を掴んでいる手を離させると、別のソファーに彼女を座らせ自身もその隣に腰掛けた。ここで漸く翼は、何時の間にか自分をソファーに縛り付けていた魔法の鎖が消えていることに気付く。

「ちょっと翼ちゃんに聞くけどさ、奏が翼ちゃんのちょっとした我が儘に目くじら立てるような奴だと思う?」
「それは…………でも、明星さんに関しては話が別だと──」
「んな訳ないっしょ。ちょっと前の奏がどうだったかは知らないけど、少なくとも今はその程度で機嫌悪くしたりはしない筈だよ。寧ろ俺との仲を遠慮して距離取られる方が奏にとっちゃきつい筈さ」

 颯人の言葉には頷ける部分もあったので、翼は彼の言いたいことを自然と理解していた。奏と打ち解け互いに歩み寄り出してからは、奏がそういう遠慮を嫌うタイプであることを感じる様になっていたのだ。

 その事を思うと、ここ最近は確かに奏にとって翼の態度は酷く居心地の悪い物だったことだろう。思い返して申し訳ない気持ちになる。

 颯人は翼がその事を理解したことを察し、軽く彼女の肩を叩きながらフォローの言葉を投げかけた。

「ま、気にすんなって。この手の事を根に持つほど奏も器の小さい女じゃない事くらい翼ちゃんも分かってるでしょ?」
「それは、勿論です!」

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