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真・恋姫†無双~現代若人の歩み、佇み~
第二章:空に手を伸ばすこと その壱
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の剣閃を刻み込んだ。仁ノ助はその一振りに留まらず、柄を確りと両手で握り締めて詩花に迫る。
 これは呉鉤と勝手が違う武器だ。鋭利さと刀身の細さを誇る中原の刀剣であれば、その鋭利さを生かすように速さを磨く方向に傾注せざるを得ない。取分け体裁き、足捌きが重要となる。此の手の武器は手数の豊富さよりも、相手の拭い難き隙を突くような、確実さが求められる。経験を積めば積むほど、武人は武神となり、得物の刃は妖しき光を放つようになる。これこそ中原の武の真髄である。
 対して西洋剣は別方向だ。此の手の武器に共通するのは唯一点。相手を押し切り蹂躙する事、それだけだ。武に美を持たぬその得物には露骨なまでに重量が注がれ、一撃一撃が中原のものと比較にならぬほどの衝撃力を抱く。斬るよりも叩く、砕くに精通する得物は、正に当たれば良い・手数が多ければ多いほど良いといった、非常に脳筋的な武器であった。
 仁ノ助も半ば無意識とはいえそれを分かってか、得物の重量を生かすように腰の回転をより意識させながら、剣を凪いだ。体躯に近い部分から伸びていくような攻撃。間延びして一見緩やかに見え、瞬間目も眩むような速さで剣閃が放たれる。元々斬る心算は無かったであろう数度の空振りを詩花は必要以上に恐れ、一気に五間ほどの距離を開ける。手に響いた衝撃の強さに、驚愕を覚えているのだ。

(ううう、嘘でしょっ!?なんであんなに重たいのよ!?)
「...どうした、固まって。臆したか?」
「ばばばばっ、馬鹿いいい言わないでよ!!臆病でもへへへ変態でもなんでもないわよっ!」
「...いや、そんな事言ってないんだけど」

 緊張を一気に覚えたか声が上擦り、戟の穂先が震えている。これでは鍛錬とはいえないと思ったのか、仁ノ助は宥めの言葉をかけた。

「詩花、緊張して武器をまともに持てなくなってるぞ。ほら、リラックスリラックス」
「へ?なに、りらっくすって?」
「あぁ、そだな...深呼吸しろ、深呼吸。色々捗るぞ」
「え、あぁ、うん。...すぅ......はぁ......」

 吸って、吐いて、吸って、吐いて。
 何度か繰り返す内に緊張が解れ、過度に疲れを意識しなくなってくる。詩花は改めて柄を握り締め、それを頭上で大きく振り回し、その穂先を仁ノ助に突きつけた。 

「うっしゃぁ!」
「落ち着いたか?」
「えぇ...じゃぁ、加減抜きで往くわよ」
「あぁ、受け止めてやる」

 言うや否や、詩花は物怖じせず、仁ノ助の得物の手中へと飛び込んでいく。大きく足を踏み出し、撓|《しな》らせるように戟を突き出す。

「しぃっ!」

 案の定回避される。続けて鎌で頸を裂くよう右に払うがこれも避けられる。だが予測の範囲内だ。詩花は力を反転するように即座に刃を返す。それはまるで横合いより抜き打ちを放た
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