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真・恋姫†無双~現代若人の歩み、佇み~
第二章:空に手を伸ばすこと その壱
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ような経緯となったのか。
 町を出でて早二週。仁ノ助の旅は一貫として、曹操か劉備への仕官を目的としてその道程を歩んできている。其の間、野生の獣を見つけては狩猟し、清水を見つけては喉を潤し、またある時は商人等と物資・情報交換をして旅を続けてきた。だが詩花は不満を持つ。折角手に入れた武器が使う機会が全く訪れなかった事に対してだ。本来ならば順風満帆に旅が続くだけ感謝すべきなのだが、詩花は寧ろそれを好んでいなかったようである。大方、旅を冒険と勘違いして、危険らしい危険に遭遇しないのが理由であろう。
 そんな訳で彼女は仁ノ助に、自らにある程度の危険を齎す武技鍛錬の実行を提案し、結果として手荷物と愛馬を控えさせて、現在に至るのだ。といってもあくまで鍛錬。仁ノ助は攻勢に回らず、守勢に徹するという事で了解を得ていた。

「ったくもう!自分が強いからっていい気になっちゃって...」

 強気に言い放つ仁ノ助に、そしてそれに及ばぬ自分に苛立ちを覚えながら詩花が立ち上がり、土塗れの戟をもう一度構え直す。胸中の闘志は悄然とならず、未だ熱く燃え滾るのを感じていた。
 対する仁ノ助は得物である呉鉤を正眼に構えつつ、その内心で僅かに驚きを抱いていた。

(...さっきの一撃、結構危なかったな。よく避けたなぁ、俺)

 肩口への鎌の一撃。唯身体が反応するがままに避けた心算であったが、鋭利な一撃は本来の狙いを外し、仁ノ助の外套を浅く切り裂いていた。茜の光を受けた青糸が解れて、薄く靡いている。同伴者の確かなる腕前に、仁ノ助は知らず知らずに安堵を覚えていた。

「今度は当てるわよ!貴方もっ、全力出しなさいよね!!」
「へーい」

 気の抜ける返事を他所に詩花が飛び掛る。仁ノ助の足捌きを警戒してか、距離を開けて突きを放ち、刃先に肉を引っ掛けるような捌きを続けざまに見せる。それは遠目から見れば味気の無い攻撃であるが、やられる側としては堪ったものではない。己の得物では届かぬ距離に敵の肉体が存在し、その凶刃に曝され続けているのだ。凡そ、有利とはいえぬ情勢である。それでも回避を続け、刃を素早く返して払いと突きを弾く辺りは流石の手並みである。埒が明かぬ攻防に、攻め手である詩花は歯噛みを覚えずにはいられない。

「ちっ!おりゃぁっ!!」

 柄半ばを持ち、詩花は一転、一気果敢に攻めかかる。戟を刃中心で攻めている方が間違いなのだ。石突とて、人と屠るに全うな武器である。柄の両端に凶器を備付けたかのように、詩花は攻めかかった。
 流れが一変する。柄を半ばより持つ事で戟の重量をそれほど気にせずとも良くなった為か、リーチが短くなる反面、一撃が鋭くなる。更に石突の払いと突きが加わり、仁ノ助にとって見れば、剣を柄頭でくっ付けた双刃剣を相手にするが如き難儀な事態。なまじ新品なだけに切
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