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ドリトル先生の林檎園
第八幕その十二

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「だからね」
「先生にしても」
「幸せについてはすぐ傍にある」
「そう思ってるんだね」
「うん、実際にそうじゃないかな」
「ささやかでだね」
「すぐ傍にあるものだよ、つまり」
 先生は幸せについてさらにお話しました。
「気付けばね」
「そこにだね」
「幸せはあるものなんだよ」
「その通りかも知れないね、幾ら贅沢を出来ても」
 それでもと言う王子でした、先生のお話を聞いて。
「それでもね」
「そうだよね」
「幸せかっていうと」
「限らないね」
「そうだね、じゃあ」
「そうだよ、僕はね」
「幸せだね」
「とてもね、これ以上はない位に」
「それはどうかと思うけれどね」
 王子は先生の今のお話には笑って応えました。
「またね」
「いや、本当にね」
「これ以上はっていうんだ」
「そう、幸せだから」 
 先生はあくまでこう思っています、ですが皆はそんな先生に優しいながらもやれやれといった表情を見せています。
 そうしてです、動物の皆も言うのでした。
「もっとね」
「幸せになってもいいのに」
「それでなれるのに」
「今言った通り気付けばね」
「もう一羽青い鳥がいるんじゃない?」
「そうじゃない?」
「いや、もう充分いるからね」
 ですが先生だけはこう言うのでした。
「満足しているよ」
「無欲なのはいいことだけれど」
「先生はすぐに満足するから」
「幸せって感じて終わるから」
「やれやれね」
「もっと幸せを求めてもいいのに」
 皆はわかっていますが先生だけは本当にわかっていません、先生の青い鳥は実はもう一羽いるということに。
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