(とある診断結果より)
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「悪ぃ、ちょっとついて来てくれねーか」
友達と帰る支度をしていたところだった。一体なんだろう? ズボンのポケットに両手共突っ込んで歩く背を早足で追いかける。一年生の時に同じクラスだった彼とは気楽に話せる仲だ。今は敢えて違う教室まで遊びに行くことこそしないが変わらない関係を維持している。
ところで部活に行かなくていいのだろうか。確か顧問は厳しいことで有名な教師だったはずだ、と心配をしている内に小さな空き教室の中へ招かれた。
「えーと、何かあった?」
向かい合わせに立ち改めて要件を伺うも、彼の表情は馴染みの明るいそれではない。一度視線が重なった後、ぎゅっと音が聞こえそうなほど瞼を閉じる様子は初めて見る。驚いていると、見かけより鍛えられた身体にすっぽり包まれていた。唐突すぎて頭が追いつかない。パチパチと瞬きをしてみたが、男子に囲われている状況は現実だった。
「ど、どうし――」
ぐ、と拘束が強くなったと思えば、耳元で小さく名前を呼ばれた。今までに聞いたことがないくらい真剣な、いや真摯なと言うべきであろう声。
「好きだ、アンタが」
ああ、胸を突かれるとはこういうことなのか。じんわりと体の中から温かい気持ちが湧いてくる。薄っすら自覚しつつ在ったものを先に盗られてしまったような悔しさも少々あるが、さあ、何をどう伝えよう。――気づかれないよう密やかに微笑んだ少女は言葉なきまま目一杯の力を込め、抱き返した。
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