第1部
ロマリア〜シャンパーニの塔
王様の秘密
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に。ナギの言っていることは大げさには聞こえなかった。
それにしても、一向にシーラが来ない。シーラは教会の周りだけを探すように言ったので、どんなにじっくり探しても2時間以上はかからないはずだ。
「もしかしてあいつ、どっかで道草食ってんじゃねーのか?」
それを聞いた途端、私はついこの間の出来事を思い出した。
そういえば、ロマリアにはモンスター格闘場という、一種の賭博場がある。シャンパーニの塔へ盗賊退治に行く前にもシーラは大勝ちして帰ってきたんだった。
「ナギ、シーラを呼び戻しに行こう」
「は?」
いる。彼女は絶対にいる。私はなぜかそう確信した。
そうと決まれば話は早い。私たちは酒場の地下にあるという格闘場へと足を運んだ。
生まれて初めて目にしたモンスター格闘場。それは田舎育ちの私には理解できないものだった。
酒場よりもやや広いその空間の中央は頑強な柵で覆われており、その柵の向こうにはさまざまな種類のモンスターたちが争っていた。そしてその戦いあっているモンスターたちを見て、歓声を上げている人々。普通に考えれば、モンスターは人々が恐れる存在なのに、この場所だけは違っていた。
私はその異様な空間に慣れることが出来なかった。けれど、この中に間違いなく、自分たちの仲間の一人がいるのだ。
「ナギも初めてここに来たんだよね。どう?」
「どう、って?」
私の問いに、ナギは訝しげな顔をする。
「シーラみたいに、賭けとかやりたいと思う?」
「んー、そうだな、金があればやってみたいと思うけどね。あ、そうだ、あいつまた勝ってねえかな。少しぐらいなら軍資金くれるかも」
一人で勝手にそういうと、ナギはシーラにお金をもらうため(?)、私を残して行ってしまった。
どうやら格闘場に対して否定的なのは私だけのようだ。
シーラはナギが見つけてくれるだろう。私は特にモンスターの戦う姿に興味を持つことなく、心なしか重い足取りで辺りをぶらついた。
勝敗が決まるたび、辺りから歓声が轟く。勝って喜ぶ者。負けて悔しがる者。さまざまな人の声が熱気のこもった室内に響き渡る。その熱気から避けようと、私は隅の壁に寄りかかることにした。
「あれ?」
私は違和感を感じた。壁際に一人、男の人が立っている。別に男の人が立ってるぐらいなんでもないことなのだけれど、何かが違う。―――そう、こんなところに一人で立っているのが変なのだ。
私のように格闘場に興味がない人間でもない限りは。
私がその人を見つめていると、男の人のほうもこちらに気づいたらしく、目が合った途端すぐに視線を逸らす。一瞬見えたその顔は、見覚えのある顔だった。
「ひょっとして……ロマリア王ですか?」
王様の名前がわからないのでついそう言ってしまったが、どうやら当たりだったらし
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