第五章 仲間
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思わず両腕を上げて、ううーんと大きく伸びをした。
「同じ空間の裏と表だというのに、こちらはこーんなにも爽やかだとはあ」
「うん。もうすぐ財布の中身も爽やかになるねえ」
間髪入れず、カズミの意地悪そうな一言。
「そ、そうだったあ」
がくーっ、とよろける滑稽な仕草に、四人は笑った。
ま、いいか。ケーキくらい。
と胸に呟きながら、アサキも頭を掻いて笑った。
なんだか、とっても楽しい気持ちだ。
ようやく戦い終わって異空から出られたという開放感、生きているという安堵、この世界を守ったのだという充足感、それに加えて今日はついに一人でヴァイスタを倒したということもあって、普段以上に楽しい気持ちになっていたのである。
「雑貨屋なんかよりさあ、カラオケでいいんじゃねえの? ジーザックスのデカギガ唐揚げ美味いぜ。エリリンの新曲入ってるかも知れねーし」
「あ、カラオケ、いいねえ」
アサキが、楽しげな笑みを浮かべて、食い付いた。
「おおおおお、アサキがいたんだったあああああ! じゃ、カラオケは無しで」
「えー、それどういう意味い?」
「どうもこうもねえよ。じゃあ食いもんはノリで決めるとして、とりあえず新しい雑貨屋かドンキか決めようぜ」
「ヤンキーならドンキ一択じゃろ」
治奈がからかう。
「ハルハルちゃん、ヤンキーって誰のことかなあ?」
顔を引きつらせながら、ぐいーっと治奈へと顔を寄せた。
ははっ、とごまかし笑いをする治奈。
「まあいいや。……アサキは、どっちがいい? 駅前の雑貨屋とドンキ」
カズミが、ヤンキーいわれて怒りにバリバリ引きつった顔を指で直しながら、尋ねる。
「わたしは別に、どこでもいいよ」
振られたアサキは、にこり微笑んだ。
別に適当に答えたわけじゃない。
みんながいるのならば、どこだっていいんだ。
そんな、仲間がいることの心地よさに、アサキは微笑んでいたのである。
こうして並んで歩きながら、他愛のない話をするような友達のいることに。
ほんの少し前までは、この四人の誰とも知り合いじゃなかった。
でもいまは知り合いどころか友達。
いや、違う。
かけがえのない、親友なんだ。
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