第五章 仲間
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ると、走り出した。
昼の異空、青の反転した、くすんだオレンジ色の空の下を。
「とっととぶっ倒しちゃって、柏に遊びに行くぞーーーーっ!」
と、成葉も甲高い声を張り上げながら、カズミの背中を追う。
その後を、残る三人も。
色調の反転し、見えるもの全てがねじれ歪んだ、瘴気に満ちた異空の中を。
ヴァイスタを倒すために。
世界を守るために。
2
ごすり
ごすり
聞き覚えのある、不快な音。
湿って腐り掛けた巨木を、吊るしてすり合わせるかのような。
アサキの脳内に、しっかりこびりついている、忘れたくとも忘れられない、誰もが生理的嫌悪感を催すであろうおぞましい音。
角を曲がったところで、その記憶に間違いのないことを確信した。
「やっぱり……」
住宅街の狭い道路を塞ぐように、一体の、全身ぬめぬめとした真っ白な巨人が立っている。
ヴァイスタである。
外見特徴の一つである、にょろにょろとした長い腕を、ムチのように振るって、空間を、異空と現界の境を、殴りつけている。
脳に直接響く不快な音は、それによるものだ。
ということは、現在その向こうにいるのは……
アサキは目をしっかりと凝らした。
ヴァイスタが執拗に殴っているのは、空間である。
魔力の目を凝らすことで、アサキたちにもはっきり見ることが出来るが、透明ビニールを何枚も何枚も重ねたような感じである。
透明だけども、重なり合いのために濁っていて、その向こう側にあるものが、見えそうで見えない。
だけど、さらに目を凝らすと、なんとなく分かる、ぼんやりと見える。
小学高学年くらいであろう、水色のランドセルを背負った女の子の姿が。
ヴァイスタの姿など見えていないはずだが、なにかしらの気配、不安を感じているのだろう。
女の子は足を止めては、しきりに、きょろきょろと見回している。
このビニールのような膜の、単なる反対側ということではなく、同じ座標だけれども違う空間、つまり現界(異空にとっての異空)に、その女の子はいるのだ。
このヴァイスタは、異相空間の境層を何度も殴り付けることで、脆い箇所を探り、破ろうとしているのだ。
アサキの脳裏に、数ヶ月前に経験した嫌な記憶が蘇る。
なんの力もない、ただの少女として、この異空に連れ込まれた時のことを。
明木治奈が助けてくれなかったら、自分は現在ここにいない。
この女の子を、あんな怖い目に遭わせるわけにはいかない。
ぎゅっ、とアサキは力強く、両方の拳を握った。
その隣で、
「群れからはぐれた一匹っぽいな。ん
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