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NARUTO 桃風伝小話集
その39
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ことは何もない。
だからこそ、ミコトは決して里の上層部の友への仕打ちを忘れない。
けれど。
親友だったクシナが、密かに腹の子に願っていた未来を贈る手助けくらいなら、今のミコトにも可能だ。
ミコトにしか、きっと出来ない。
友人であるクシナの、人柱力としての本音と弱音を、ミナトの前に、友として聞き続けてきたミコトにしか。
クシナの子は、クシナと同じ人柱力にされてしまったから。
クシナは元来、嘘の苦手な素直な子だった。
長じて多少は感情を隠す術を覚えたようだが、ミコトからしてみれば、ミナト共々、分かりやすいくらい考えている事が周りに筒抜けな人間だった。
だからこそ距離を置かれたのは分かっていたし、その事を気にするなと、常にサインを送り続けた。
人として、二人とも、好ましい人柄だったから。
だからか、人の目が届きにくい場があれば、クシナは変わらぬ友情を示してくれた。
そうして、お互い、子を身籠った状態で、偶然産院で顔を合わせた時、ふいにクシナが漏らしたのだ。
産まれてくるお腹の子が、男でも女でも、ミコトの子と友になって欲しい、と。
自分達のように、と。
口を滑らせて漏らした途端に、お互いの現在の立場を思い出し、慌てて否定するような言葉を捲し立て始めた照れたクシナに、それまで少なからずミコトが抱えていたクシナへの隔意は露と消えた。
ミコトに満ちたのは、クシナの願った美しい夢だ。
木の葉創設の元となった、うちはと千手の友愛に満ちた未来想像図だ。
それは、うちはが創設期から求め続けた『木の葉の里』だったから。
だから、忍になる前の、ただのミコトとクシナとして、アカデミーに通っていた子供の頃のように、冗談めかして茶化してみたのだ。
お腹の中のクシナの子が産まれて来た時。
その子がもしも女の子だったら、『うちは』にお嫁に頂戴ね、と。
これからミコトが産む子は男の子で、クシナは妊娠が分かったばかりだったから。
戸惑うようにきょとんとするクシナに、火影の娘が『うちは』に嫁入りすれば、里とうちはの確執が薄れるきっかけに十分だし、何より、そうして『家族』になれたら、また、昔みたいに一緒に過ごせるわね、と。
そう言って、いつものように微笑みかければ、クシナはみるみるうちにミコトの好きなクシナの笑顔を見せてくれた。
一切の曇りのない明るい笑顔を。
そうしてすっかりその気になってしまったクシナは、さっそく夫のミナトにそう伝えると嬉々として飛ぶように帰宅して、後々火影室での火影の奇行に繋がる原因になったようだが、ミコトに後悔は一切ない。
そうすれば、穏やかに、自然な形で一族と里の軋轢が解け、クシナとミコトが思い描いた『木の葉の里』が実現するのだから。
親友を親友と呼んで、親友と遇せる環境の構築と奨励に励んで、一体何が悪いというのだろう。
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