第二章
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「今日の仕事先だけれど」
「ああ、銀河さんのか」
「あの人の恰好も気になりますが」
「あの人おかまバーの主人もしてるからな」
「だからですか」
「あの髭だけれどな」
非常に濃いそれがあってもというのだ。
「しかしな」
「それでもですか」
「おかまバーにもな」
「出ておられますか」
「そうなんだよ」
「そうですか、それと」
大西はさらに話した。
「あそこの猫ですが」
「アライグマそっくりのでかい猫だな」
「やけに太った」
「銀河さんとずっと住んでいるな」
「はい、あの猫三十五年生きているとか」
「らしいな」
「その様ですね、あの猫って」
猫という生きもの自体についてだ、大西は社長に話した。世界的な企業グループ八条グループの系列だが末端なのでかなり小さな会社だ。社員も数人で社長も自分から工事に出ることすらある位である。
「三十五年生きるんですか」
「そんな猫は滅多にいないな」
「そうですよね」
「というかだ」
さらにだ、彼は言うのだった。
「あの猫おかしいだろ」
「おかしいっていうか」
「明らかに普通の猫じゃないな」
「そうですよね」
「一メートルあるしな」
「それで三十五年とか」
「化け猫だろ」
社長は実にあっさりと言った、最近太ってきたその顔で。
「あれは」
「そうですよね」
「ああ、俺もあの猫何度も見てるけれどな」
「どう見てもですか」
「化け猫だろ、三十五年生きている時点でな」
「もうですよね」
「普通の猫じゃなくてな」
そしてというのだ。
「アライグマに見えるしな」
「模様そうですよね」
「あの猫が普通だとかな」
「絶対にないですね」
「しかしな」
ここで社長は腕を組んでだ、自分の席から大西に言った。
「一つ気になることがあるな」
「何ですか?」
「いや、化け猫ってな」
ここで彼は言うのだった。
「俺はお袋が佐賀県出身でな」
「あっ、そうですね」
「佐賀ってあれだろ」
「化け猫ですよね」
「黒猫だけれどな」
「佐賀の化け猫は」
「そこは違ってもな」
それでもというのだ。
「あの猫違う感じがするな」
「普通の化け猫とは」
「仕草もな」
それもというのだ。
「違うな」
「確か佐賀の化け猫って人間に化けましたよね」
「ああ、それで油舐めたりな」
「それで、ですよね」
「妖術使って人間と猫が合わさったみたいな動作してな」
そうしてというのだ。
「それが特徴だけれどな」
「それがですか」
「ああ、全然違うんだよな」
これがというのだ。
「これが」
「あの猫は」
「俺はあの猫は確実に化け猫だって思ってるけれどな」
それでもというのだ。
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