ボス攻略(3)
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えないかも……」
「……」
俺は白コートのアバターにわずかに感心と、同時に違和感を覚えた。ユイと俺たちのやりとりを他人が見たら、不思議に思うか、それとも「パパ」「ママ」プレイをプライベートピクシーにさせているイタい人扱い……されるんじゃないかなーと常々思っている。まさかユイがかつてSAOに存在したAIで、仮の姿としてプライベート・ピクシーの姿をしている、とは誰も思わないからだ。
が――。白コートアバターは、そういった一般常識的なところを飛び越えて、さっきの台詞を口にしたようだ。
その微妙な飛躍が……すこし気になった。そもそも、このVR空間で子供が作れない、というは口に出すのも少々億劫なくらい当たり前なことでもある。
じりじりと、頭の奥深くで何かがつながっていく予感がした。もうあと少しだけ時間をかければ結論を出せそうだったが、それを遮ったのはユイの元気な声だった。
「パパ! あと二十秒で準備できるそうです!」
「お、早いな……もしかして……」
「はい! ママも……ママも、早く、帰りたいって……」
最後の「帰りたい」のあたりをしゃくりあげながら言うユイに心打たれつつ、俺は二十秒でできそうなことを頭に列挙する。HPバーの横に並ぶバフのアイコンに目を走らせたあとちらっ、と脳裏をかすめたアイデアを実行に移すため、左手でメイン・メニュー・ウィンドウを開いた。すぐさまアイテムストレージに移動。カテゴリ別に並んだアイテムの中から、第十五層のボスドロップ品をオブジェクト化した。
武器・装備品・アイテムの貸与は、できうる限りの予防策を打ったあとに行うのが普通だ。フレンド間、ギルドメンバー間、ある程度の交遊関係を築いてからでないと、とてもじゃないが貸し与えることなどできない。そのまま持ち去られる可能性だってあるからだ。何十時間もかけて強化したレアドロップ装備をそのまま持ち逃げされ、あまつさえプレイヤーオークションにかけられても、時はすでに遅し。持ち逃げしたほうはもちろん悪い。だが、なんの予防線もはらずにアイテムを貸与したほうも悪い。
そんなことはわかってる。わかっているけど――。
俺は背中に出現した片手直剣を隣の白アバターにぐいっ、と押しつけた。
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