攻略準備(3)
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うな、そんなやんちゃな雰囲気でボス部屋を眺めていた。
そんなキリトの背中を見ていたクラインはずずっ、と鼻をならし、人情家の火妖精族は、一度だけぐうっ、と目頭をぬぐった。
「くそっ……あいつばっかり……ずるくねえか……今日って……クリスマスだぜ?」
「えっと、それは……その……」
それに関して、アスナは何も言えなかった。
「あ、ごめんクライン! そろそろ準備しなきゃ……」
「あ、ああ……俺も確認しとくか……じゃあな、アスナっち」
少々無理やり話を打ち切ったアスナが、自分の装備の確認を終え頭の中でボス攻略のシミュレートをしていると目の前のシリカが尻尾をピクつかせた。
「アスナさん。そろそろ時間ですよー」
「――うん」
シリカの言うとおり、そろそろ会議終了から十分が経過する。
アスナはボス部屋に続く扉の前に足をすすめた。
扉のデザインは旧アインクラッドのものと同じだが、中で待ち受けるボスはALOのシステム変更に合わせて再設定された難敵だ。
アスナは「よしっ」と自分に喝をいれてから、扉の前に集まるメンバーに向けて叫ぶ。
「みなさん、準備は大丈夫ですか! 盾役の方は中に入ったら陣を組んでください! あとの皆さんは打ち合わせ通りにお願いします!」
何かしらの応答を返しつつ、五十名近い即席攻略メンバーが扉の前に並んだ。
土妖精族の盾役が二人先頭に立ち、扉を開け放つ。まだ明かり一つない真っ暗闇のボス部屋にぞろぞろと、まずは盾役のアバターが足を踏み入れていく。続くのはダメージリソースとなる面子だ。この中にアスナも含まれる。
盾役のアバターが全員中に入ったのを確認し、アスナも暗闇に踏み出そうとした。
が、まさしく一歩目を踏み出そうとした瞬間的だった、背後から声が飛んできた。
「どうせだから楽しもうぜ、アスナ。俺も全力で楽しむから」
一番聞きたかった声に振り向くと、キリトがいつものシニカルな笑みを浮かべていた。
頭の上に陣取ったユイも、ガッツポーズと笑顔をアスナに送ってくる。
胸に新しい力が宿るのを感じつつ、アスナは、二人に言った。
「ありがとキリトくん、ユイちゃん。あ、でもキリトくんはちゃーんと、与ダメよろしく」
「な、そっ――もうちょっと、なにか言うことあるだろー!」
もっと別の言葉を期待していたらしく、微妙な声音で叫んだキリトを、心底頼もしく思いながら、アスナはまだ薄暗いフロアボスの待つ部屋に踏み込んだ。
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