第百三十五話 趨勢は決したがその四
[8]前話 [2]次話
「その時はだ」
「また別の槍をやな」
「出す、そして突き出す」
切られたその傍からというのだ。
「そしてだ」
「倒すな」
「そうしていく」
こう言って実際にだった、英雄は槍を出させて示現流で切り込もうとする兵達を突かせた。そうして全身を止めつつ。
鉄砲や術、弓矢で攻めた。すると兵の数では大きく劣る敵軍はやがて動きを完全に止めてそこから暫くして。
退きはじめた、英雄はそれを見てまた命じた。
「追撃を仕掛けるが」
「それでもですね」
「程々だ」
こう謙二に答えた。
「それだけでいい」
「積極的に追わずに」
「そのうえでだ」
まさにというのだ。
「敵は薩摩まで退かせる」
「そして我々はですね」
「肥後を掌握する」
今自分達がいるこの国をというのだ。
「熊本城も手に入れたしな」
「この城からですね」
「肥後の全土を掌握する」
「そうしますね」
「だからだ」
それ故にというのだ。
「今はだ」
「敵は積極的に追わない」
「そうする、いいな」
「わかりました」
謙二もそれでいいと頷いた、そしてだった。
英雄は今はだった、敵軍を積極的に追わずにそうしてだった。彼等は適度なところで逃げるに任せた、すると。
物見から帰ってきた斥候達がこう英雄に話した。
「やはりか」
「はい、湿地に伏兵達を忍ばせていました」
「肥後の南で」
「そうして我等を待ち伏せていました」
「少しの兵を見える場所に置いたうえで」
「釣り野伏せか」
英雄は斥候達の話を聞いて言った。
「それか」
「その様ですね」
「敵はそれを狙っていた様です」
「ですが我々が来ないので」
「それで諦めてです」
「薩摩まで退きました」
「なら薩摩でまたしてくるかも知れない、だが」
それでもとだ、英雄はさらに話した。
「そうしてくるならな」
「敵がそうしてくるなら」
「こちらはですね」
「どうするか、ですね」
「そうだ、敵がそうしてくるとわかっているなら」
釣り野伏せ、これを仕掛けてくるならというのだ。
「我々はそれをやり過ごす」
「そうしますね」
「むざむざ敵の罠にはかからない」
「そういうことですね」
「そうだ、しかし奇襲を狙うとは」
釣り野伏せという乾坤一擲の戦術を仕掛けようとしてくるならとだ、英雄は敵の立場に立って考えて述べた。
「敵もかなりな」
「追い詰められていますね」
「それも相当に」
「左様ですね」
「そうだ、既に九州の殆どを失っている」
敵のこの状況についても話した。
[8]前話 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]
しおりを挿む
[7]小説案内ﾍﾟｰｼﾞ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿ｻｲﾄ〜
利用規約/ﾌﾟﾗｲﾊﾞｼｰﾎﾟﾘｼｰ
利用ﾏﾆｭｱﾙ/ﾍﾙﾌﾟ/ｶﾞｲﾄﾞﾗｲﾝ
お問い合わせ
2024 肥前のﾎﾟﾁ
しおりを解除