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あなたにだけは許されたい

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 現在時刻は午前四時。一人寝よりずっとよく眠れたのだと、幾らか軽く感じられる身体が証明していた。隣で規則的な呼吸を繰り返す彼女が起き出さぬよう注意を払い、冷え切った床に足を下ろす。温もりから一歩ずつ離れる代わりにか、ぺたり、間抜けな足音だけがついて来た。

 移動したリビングのカーテンを開く。薄暗い夜明け前の陰りに、ぼんやりと白が浮かんでいる――昨夜から降り始めた雪だ。夜目が効く自分には、それがさらさらした美しい砂のようにも見える。ぼんやりと眺めながらふと、積雪に気付いた彼女はその顔を喜色に染めるのだろうと思った。この砂を彼女が掬っている姿はきっと、朝日と相まって眩しさすら感じるに違いない。
 窓から離れ、早足で寝室へと戻る。己の全てが冷え切っていることを知りながら、相変わらず温かく柔らかい彼女を抱えあげた。小さく唸る声に申し訳なさが募るも謝罪の言葉が零れるだけで、この行動を止めることは出来なかった。

「よっ、っと……悪い」

 再びやってきたリビング、大きなソファーへ抱き締めていた人を降ろす。目を覚ますことはないが、身体を小さく丸める彼女の横に自分も寝転がり、持ってきた毛布を互いの上に掛けた。レースのカーテン越しに外を探るも、日の光はまだ遠い。

「……寒ぃなあ」

 今頃になって冷えを自覚し、暖を取ろうと深く眠り続けている女を抱き寄せた。一瞬、眉間に皺を寄せるも大人しく腕の中に収まってくれることに、どうしようもなく愛しさが募る。明るい色の髪から立ち上ったシャンプーの香りを吸い込み、健やかな寝息に耳を澄ましていると、自然に瞼は重くなってゆく。そっと、願うように呟いた"おやすみ"に優しい返事は返らない。

『貴方が眠りに就いて、それから目が覚めても傍に居るよ』

 ――いつか彼女が己のために祈ってくれたその言葉が蘇る。ああ、えらく眠たいな。欲求に逆らうことなく視界を閉じれば、今度こそ夢を見られるような気がした。





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