暁 〜小説投稿サイト〜
魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
無印編
第5話:黄金の時間
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い。そうだよな、心配かけた。でも安心しろ。俺は今こうしてここに居るから」

 先程まで悪口も同然の呼び方で奏を呼んでいた人物とは思えない、優しい声色で語り掛ける颯人。その言葉と、何より縋り付いた彼の胸板と自分の頭を撫でる掌から伝わる体温が、彼の存在を、生存を如実に奏に教えてくれる。

 その事に奏は今まで連絡を寄越さなかったことや絶唱のダメージを勝手に引き受けた事に対する怒りも何もかもを忘れ、ただひたすらに彼と再会できたことを心の底から喜んだ。

「……本当に、颯人なんだよな?」
「あぁ…………久しぶりだな」
「夢じゃないんだよな?」
「ん? 頬っぺた抓ってやろうか?」
「それやったらこっちはその耳千切れそうになるくらい引っ張る」
「そいつは勘弁してくれ。俺お前にやられるそれだけは苦手なんだ」

 気付けば普通に会話を交わす2人。

 苦笑交じりに告げる颯人の言葉に、嘗ての、まだ子供だった頃の黄金の様に輝く思い出が蘇る。その輝きが奏の心を照らし、翼達二課の仲間と過ごしたことで溶けつつあった彼女の心の氷の最後の一欠けらを完全に溶かしきった。

 それは涙となって奏の眼から零れ落ち、感極まった彼女は颯人の存在を確かめる様に彼に抱き着いた。

「良かった…………本当に、生きてる。颯人が無事で、本当に、良かったよぉ――!!」

 まるで子供の様に泣きじゃくる奏の姿に、翼は呆然と彼女を見つめ颯人は未だ痛む体に鞭打って上体を起こした体勢を維持し右手で奏の頭を、左手で背中を優しく撫でながら声を掛けた。

「おいおい、昔はこんなに泣き虫じゃなかっただろうが。どうした?」
「誰の所為だと…………馬鹿」
「…………フフッ!」

 未だ目からは涙を流しつつ、子供の様に頬を膨らませる奏の様子に傍から見ていた翼は思わず吹き出してしまった。彼女と出会って3年になるが、こんな風に歳相応かそれ以下の少女のような姿をした奏を見た事が無かったのだ。

 初めて見る奏の新鮮な姿に、翼は堪らず笑みを溢してしまった。

 戦いが終わり、少なくない犠牲者を出してしまったライブ会場ではあったが、今この瞬間だけは穏やかな空気が流れていた。

 だが、それも長くは続かない。1人の人物の登場によって、状況は大きく動き出す。

「いつまでのんびりしているつもりだ、颯人」
「うぇ、もう時間かよ?」
「ん? なっ!? テ、テメェはッ!?」

 そこに現れたのは奏にとって忘れられる筈もない。目の前で颯人を連れて言った張本人である仮面の男ことウィズであった。

 彼の姿を見た瞬間、奏の目から涙は引っ込み一気に敵意に満ちた目をウィズに向ける。

 そのままウィズを睨みつけつつ、奏は近くに落ちているガングニールのアームドギアを手に取ろうと
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