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英雄伝説〜西風の絶剣〜
第64話 踏み出す一歩
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になり幸せになってくれることを夢見ていた」
「父さん……」
「だがヨシュアは姿を消してしまった、俺の甘さが今回の件を招いたんだ」


 カシウスはそう言うとエステルの元に行くとジッと彼女の目を真剣な表情で見つめる。


「エステル、俺がお前に今回の件に関わるなと言ったのはヨシュアが俺達と過ごしたあの時間は演技でのものでしかないかもしれない、もしそれが事実だった場合それを知ったお前が耐えがたいショックを受けるのが分かっていたからだ。だから俺は自分でケジメをつけようとした」
「……」
「エステル、お前はこの話を聞いてそれでもヨシュアを追うのか?お前と過ごした思い出全てが嘘かもしれないんだぞ?」
「……それでもあたしはヨシュアを追うわ」


 カシウスの問いにエステルはそう答えた。


「父さんの話を聞いてヨシュアはあたしの想像もつかないくらいの何かを背負っているんだって思ったわ。あたしなんかじゃそれを払ってあげることはできないかもしれない、でも一緒に背負うことはできると思うの」
「……お前への想いすらも嘘かもしれないんだぞ?」
「そうかもしれない。でもあたしが好きになったのはヨシュアっていう一人の男の子なの、その気持ちの嘘なんてないわ」
「エステルさん……」


 エステルは迷いなくそう言った。その姿は同じ女の子として輝いて見えてクローゼも同じことを思ったのか感銘を受けた表情でエステルを見ていた。


「嘘なら嘘で十分よ!その時はあたしに惚れさせてやるんだから!だからあたしはヨシュアを追いかけるの、だって世界で一番ヨシュアが好きだから!」
「……好きか。そうなることを願っていたとはいえ父親として複雑な気分だな。これが親離れというものか」
「ごめんね、父さん。父さんはあたしの事を想って止めてくれたのに我儘言って……」
「良いんだエステル……これ以上は俺のエゴだ、お前の覚悟を知った以上もう俺がお前を止めることはできない。すまなかった、俺の甘さのせいでお前に迷惑をかけてしまった」
「迷惑だなんて思ってないわ。だって父さんのお蔭であたしはヨシュアに出会えたんだもの」
「……そうか」


 カシウスはそう言ってほほ笑むとエステルの頭を優しく撫でながら抱きしめた。


「ちょっと父さん、恥ずかしいってば……」
「これくらい許せ。大事な娘が旅立とうとしているんだからな」


 エステルは恥ずかしそうにしているがカシウスは構わずに頭を撫で続ける。微笑ましいね。


 それからしばらくしてカシウスはエステルから離れると彼女の方に両手を置く。


「俺は軍を立て直すため身動きが取れなくなってしまう。だからエステル、不甲斐ない俺の代わりにどうかあの馬鹿息子を連れて二人で帰ってきてくれ」

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