暁 〜小説投稿サイト〜
Episode.「あなたの心を盗みに参ります」
プロローグ
プロローグ
[2/2]

[9] 最初 [2]次話
儀をした。てっきり一緒に会場に戻るものだと思っていた私は、驚いて慌てて立ち上がる。

「一緒に行かないの?」

 彼はその質問には答えずに、ニコリと笑顔を浮かべた。

「笑顔の方がお似合いですよ、お嬢さん」
「……!」

 言われた言葉に驚いて、私はなにも言えなくなった。
 そういえば、涙が止まっただけでなく、私はいつのまにか笑顔を浮かべていたみたいだ。彼は、私が泣いているのを見て声をかけてくれたのだろうか。

「あ……ありがとう!」

 遠ざかる背中にそう叫ぶと、彼は軽く手を上げてひらひらと振ってくれた。手の中に残った薔薇に目を落とす。素敵なマジックショーを思い出して、自然と顔が綻んだ。

 でも……パーティーのお手伝いさんじゃなかったのかな……。
 そう思いつつ、パーティー会場にいた人の顔を思い返してみる。だけど、一向に当てはまりそうな人は思い当たらなかった。やっぱり今初めて見たような気がする……。ここは関係者しか入れないはずなのに。
 悶々と考えながら、ベンチに置いていたカバンを持ち上げる。手に持っていたハンカチをカバンにしまおうとしたとき、なにか見慣れないものが入ってることに気がついた。
 取り出して見てみると、それは小さいカードのようで、片方の面に文字が書いてあった。

『明晩 月明かりの下で あなたの心を盗みに参ります 怪盗キッド』

「……怪盗、キッド……?」

 その文字の最後には、可愛らしい絵文字風の絵で、シルクハットを被った怪盗のようなものが添えられていた。

「……なにこれ」

 新聞もテレビも見ない私は、このカードが今世間を騒がせている大泥棒の予告状だとは、夢にも思わなかったのである。

[9] 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ