暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン ーBind Heartー
オワリトハジマリ
[5/5]

[9] 最初 [2]次話
真っ白に埋め尽くされる。
ほんの二、三秒で光は消えたが、俺はその間にすでに振り返って歩き出していた。
視界の端で、黒髪の少女だった者の本当の姿が、栗色の長いストレートヘアの美少女だったのを確認し、内心でわずかに驚いていた。
自身の本来の姿に困惑するプレイヤーの間を縫うように進み、俺は広場の端へと到着した。
本当の姿に戻ったいまの俺を、あまり多くのプレイヤーに見られるわけにはいかないのだ。
ーーそう、俺がこの、美しくも(きたな)い世界に来た、本当の目的のために……。

『……以上で≪ソードアート・オンライン≫の正式サービスのチュートリアルを終了する。プレイヤー諸君のーー健闘を祈る』

それを最後の一言に、真紅のローブ姿が空を埋めるシステムメッセージに溶け込むように同化していく。肩が、胸が、そして両手と足が血色の水面に沈み、最後にひとつだけ波紋が広がった。直後、天空一面に並ぶメッセージもまた、現れた時と同じように消滅した。
そしてーー一万のプレイヤー集団が、しかるべき反応を見せた。

「嘘だろ……なんだよこれ、嘘だろ!」

「ふざけるなよ! 出せ! ここから出せよ!」

「こんなの困る! この後約束があるのよ!」

「嫌ああ! 帰して! 帰してよおおお!」

悲鳴。怒号。絶叫。罵声。懇願。そして咆哮。
たった数十分でゲームプレイヤーから囚人へと変えられてしまった人間たちは、頭を抱えてうずくまり、両手を突き上げ、抱き合い、あるいは罵り合った。
その無数の叫びが渦巻く喧騒を、俺はどこか遠い目で見ていた。
全部、現実なんだよ。
これはゲームであり、牢獄であり、そして墓場なのだ。
だから、俺はまだ死ねない。死ぬわけにはいかない。あの目的を、果たすまでは。

ーー待ってろ、茅場晶彦。お前は……いや、お前もこのふざけた世界も、全部、俺がこの手で、

俺の手の中で、鏡が砕ける。それは弾けて無数のポリゴンとなり、光を散らして消滅した。















ーーーー絶対に、殺してやる。
















[9] 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ